ドイツ自由思想家党

ドイツ自由思想家党：自由主義左派の盛衰

ドイツ自由思想家党（Deutsche Freisinnige Partei、略称DFP）は、帝政時代のドイツにおいて存在した自由主義左派の政党です。1884年にドイツ進歩党と自由主義連合が合同して結党されましたが、わずか9年後の1893年に自由思想家人民党と自由思想家連合に分裂し、解党という結末を迎えました。

結党の背景

ドイツ自由思想家党の結党には、当時のドイツを取り巻く政治状況が深く関わっています。首相ビスマルクに反対するブルジョワ自由主義左派政党としては、ドイツ統一前からドイツ進歩党が存在していました。一方、自由主義右派政党である国民自由党内でも、1870年代後半からの保護貿易論の高まりの中で、自由貿易を奉じる党内左派議員たちが反発を強めていました。

1880年8月、ルートヴィヒ・バンベルガーやエドゥアルト・ラスカーら28名の議員が、党首ルドルフ・フォン・ベニクセンの親ビスマルク方針や保護貿易方針に反対して国民自由党を離党し、自由主義左派政党自由主義連合を結成しました。1882年にビスマルクが財政改革の一環としてタバコ専売を企図した際、進歩党左派は抗議運動を組織し、タバコ専売法案を帝国議会で否決させることに成功しました。この成功により、進歩党左派の指導者であったオイゲン・リヒターのリーダーシップが強まりました。リヒターは自由主義連合と合同することによって自由主義左派内における自らの指導権を確立しようと考え、1884年3月5日に進歩党と自由主義連合は合同し、ドイツ自由思想家党が誕生しました。

党勢の推移と衰退

結党直後の1884年10月に行われた帝国議会選挙で、ドイツ自由思想家党は国民自由党を超える67議席を獲得し、ビスマルクを脅威しました。しかし、1887年の帝国議会選挙では、ビスマルクが保守党、帝国党、国民自由党に「カルテル」と呼ばれる選挙協定を結ばせたことが功を奏し、ドイツ自由思想家党は議席を大幅に減らし32議席にとどまりました。

ビスマルク首相下最後の選挙である1890年の帝国議会選挙では、カルテルが敗北し、自由思想家党も66議席に回復しました。しかし、リヒターの左派的な党指導に対して、バンベルガーやテオドール・バルトら中道的な議員たちは不満を抱き、党内に対立が生まれるようになりました。1893年5月6日の首相レオ・フォン・カプリヴィの陸軍軍人増員法案の採決の際に、自由思想家党はリヒターら法案反対の多数派とバンベルガーら法案賛成派に分裂しました。これにより、前者は自由思想家人民党、後者は自由思想家連合を結党し、ドイツ自由思想家党は解党という結末を迎えました。この分裂の影響で、直後の帝国議会選挙では両党合わせても37議席しか獲得できませんでした。

その後

分裂後、自由思想家人民党と自由思想家連合は低迷しましたが、1910年になってドイツ人民党も加わり、進歩人民党として再結集することになりました。

主要な所属議員

ルートヴィヒ・バンベルガー
テオドール・バルト
マックス・フォン・フォルケンベック
アルベルト・ヘーネル
マックス・ヒルシュ
アルベルト・カルトホフ
ルートヴィヒ・レーヴェ
テオドール・モムゼン
オイゲン・リヒター
ハインリヒ・リッケルト
ゲオルク・フォン・ジーメンス
ルドルフ・ルートヴィヒ・カール・フィルヒョウ

参考文献

ヴェーラー, ハンス・ウルリヒ 著、大野英二、肥前栄一 訳『ドイツ帝国 1871‐1918年』未來社、1983年。ISBN 978-4624110666。
成瀬治、山田欣吾、木村靖二『ドイツ史〈2〉1648年~1890年』山川出版社〈世界歴史大系〉、1996年。ISBN 978-4634461307。
* 成瀬治、山田欣吾、木村靖二『ドイツ史〈3〉1890年~現在』山川出版社〈世界歴史大系〉、1997年。ISBN 978-4634461406。

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