ドゥルガー

ドゥルガー：ヒンドゥー教の戦いの女神

ドゥルガーは、ヒンドゥー教において非常に重要な女神です。その名はサンスクリット語で「近づき難い者」を意味し、その威容は多くの信者から畏敬の念を抱かれています。優美で美しい容姿とは裏腹に、彼女は恐るべき戦いの女神として、数々の神話にその勇姿が描かれています。

ドゥルガーの容姿と属性

ドゥルガーは、三つの目、十本もしくは十八本の腕を持ち、それぞれに神聖な武器を携えています。額の中央に位置する第三の目は、知恵と洞察力を象徴しています。虎やライオンに乗って描かれることが多いことから、その力強さと威厳が伺えます。

アスラ神族との戦い

ドゥルガー神話の核心は、アスラ神族との壮絶な戦いです。アスラ神族の王マヒシャは、その強大な軍勢を率いて天界を侵略し、デーヴァ神族の神々を追放しました。敗北したデーヴァ神族は、シヴァ神とヴィシュヌ神に助けを求め、彼らの怒りが、他の神々の力と合わさり、ドゥルガーを生み出しました。

ドゥルガーは、デーヴァ神族から神聖な武器を授かり、アスラ神族の軍勢を次々と打ち破り、最終的にマヒシャを倒しました。この戦いは『マールカンデーヤ・プラーナ』の『デーヴィー・マーハートミャ』に詳細に記されており、ドゥルガーの勇猛さと神聖さを強調する重要な神話となっています。マヒシャースラマルディニー像は、この戦いを表現したものです。

シュムバ、ニシュムバとの戦いでは、ドゥルガーの怒りが、恐ろしい姿をした黒い女神カーリーを生み出しました。また、逆立った髪からは、七人または八人の戦いの女神マトリカスが生まれたと伝えられています。

多様な名称と化身

ドゥルガーは、単一の名称ではなく、様々な名称で呼ばれています。例えば、チャンダとムンダというアスラ神族を倒したことからチャームンダーと呼ばれたり、九つの化身を持つことからナヴァドゥルガーと呼ばれたりします。ナヴァラートリーという祭りは、この九つの化身と、アスラ神族との戦いを祝うものです。カーララートリやヴィカラーラーといった別名も存在し、その多様な側面が信仰の幅広さを示しています。仏教においては、准胝観音と同一視される説もあります。

ドゥルガー信仰

ドゥルガーの信仰は、インド各地に広がっており、特にベンガル地方では盛大なドゥルガー・プージャーが開催されます。この祭りは、10月頃に執り行われ、ドゥルガーへの深い信仰を示す重要な行事となっています。

ドゥルガー信仰は、インド半島部のデカン高原に住む人々の間で古くから行われていたとされています。カルナータカ州バーダーミのアイホーレ村にある7世紀後期のドゥルガー寺院は、その歴史と信仰の深さを物語っています。寺院に残る精緻な彫刻は、当時の信仰の様子を垣間見せてくれます。

まとめ

ドゥルガーは、単なる戦いの女神を超えた、多様な側面を持つヒンドゥー教の重要な女神です。その勇猛さ、美しさ、そして多様な名称や化身は、人々の信仰の深さと、インド文化における重要な位置づけを示しています。ドゥルガー神話は、インドの豊かな歴史と信仰文化を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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