ドゥワ・ラシ・ラー

ドゥワ・ラシ・ラー

ドゥワ・ラシ・ラー氏は、ミャンマーにおける重要な政治家であり法律家です。少数民族カチン族の出身で、2021年の軍事クーデター以降、軍政に対抗する民主派勢力が樹立した国民統一政府（NUG）において、臨時大統領および副大統領という要職を担っています。ミャンマーの民主主義回復を目指す運動の中心人物の一人として注目されています。

経歴と教育背景

彼の人生は、現在のシャン州北部に位置するムンジー村で始まりました。地元のラーショー高校を卒業後、故郷のモンジー学校で教鞭を執る経験を積みました。その後、メイミョー（現在のピン・ウー・ルウィン）にある聖ミカエル学校で学び直し、1970年にヤンゴン大学に入学。法律を専門に学び、1974年に文学士号、翌1975年には法学士号を取得しました。

法務官としてのキャリアと市民活動

大学卒業後、ドゥワ・ラシ・ラー氏はミッチーナーとラーショーで二年間、検察官として実務経験を積みました。続く1978年から1994年までの16年間は、法務官として奉職し、そのキャリアの大半を法律分野で費やしました。公務を退いた後は、活躍の場を市民社会に移し、様々な組織に関わりました。地域社会の発展促進や、深刻な問題である麻薬対策など、多岐にわたる分野で活動を展開しました。

2021年クーデター以降の指導者として

2021年2月1日の軍事クーデターは、ミャンマーの政治状況を一変させました。軍による国家行政評議会が権力を掌握したのです。これに対し、クーデターに抵抗する民主派勢力は、国軍に対抗するための新たな統治機構として、連邦議会代表委員会（CRPH）を中心に国民統一政府（NUG）を組織しました。ドゥワ・ラシ・ラー氏がNUGの主要ポストに就任するのは、この過程でのことです。CRPHとカチン政治暫定調整チーム（KPICT）との協議を経て、彼はNUGの副大統領に指名され、さらに臨時大統領を兼務することとなりました。この指名にあたっては、軍との関わりが薄く、民主主義と連邦制国家への改革ビジョンを持つ人物が望ましいという議論が交わされ、拘束されていた従来の副大統領ヘンリー・バン・ティオ氏に代わる人物として、彼に白羽の矢が立てられたとされています。

軍事政権への抵抗と「防衛戦」宣言

NUGのリーダーシップの一員となったドゥワ・ラシ・ラー氏は、軍事政権に対する強い抵抗姿勢を明確にしました。そして2021年9月7日、彼はミャンマー全土の市民に対して、軍事政権に対する「防衛戦」を開始するよう呼びかける歴史的な宣言を行いました。この宣言は、全国各地で結成された市民防衛隊（PDF）など、反軍政勢力の武力抵抗を正当化し、さらには一般市民にも蜂起を促すものであり、ミャンマー国内の紛争を新たな段階に突入させる大きな転換点となりました。彼の指導の下、NUGは軍事政権に対抗するための政治的、そして部分的ではありますが軍事的な取り組みを進めています。また、彼はカチン族の代表組織であるカチン国家協議会の議長も務めており、少数民族勢力とNUGとの連携においても重要な役割を果たしています。ドゥワ・ラシ・ラー氏は、困難な状況下にあるミャンマーの民主主義と連邦制の実現に向けて、指導力を発揮し続けています。

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