ドゥーチェ

ドゥーチェ：国家指導者の称号

ドゥーチェ（Duce）は、イタリア語で国家指導者を指す称号であり、「指導者」や「統帥」などと訳されます。最もよく知られているのは、イタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニが用いた例でしょう。

語源と歴史

語源はラテン語の「dux（ドゥクス）」で、「指導者」や「指揮官」を意味します。これは、イタリア語の「duca（公爵）」や「doge（ドージェ）」と同源です。日本では当初「統帥」と訳されていましたが、現在では「統領」と表記されることが一般的です。

ドゥーチェという称号は、イタリア統一運動（リソルジメント）の英雄ジュゼッペ・ガリバルディに対する尊称として広まりました。ただし、ガリバルディ自身が使用したわけではなく、あくまで周囲からの非公式な賛辞でした。

第一次世界大戦中、ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世は自らを「王国のDuce Supremo（統帥者）」と宣言し、全軍に対する統帥権を改めて表明しました。戦後、詩人ガブリエーレ・ダンヌンツィオがフィウーメを占拠し、カルナーロ＝イタリア執政府を樹立した際、最高指導者としてドゥーチェの称号を使用しました（フィウーメ事件）。

ムッソリーニとドゥーチェ

イタリア社会党の有望な政治家であったベニート・ムッソリーニは、党内外から政治的実力者として「ドゥーチェ」と呼ばれていました。第一次世界大戦への参戦を主張し社会党を除名された後、ムッソリーニは軍人として戦場へ赴き、戦後には民族主義的な全体主義であるファシズムを提唱しました。そして、退役兵士たちの政治団体「戦闘者ファッショ」を結成し、後に国家ファシスト党として再編しました。

ローマ進軍によって国家ファシスト党が政権を掌握すると、ムッソリーニは首相（閣僚評議会議長）に就任し、徐々に王家と党を背景に権力を強化し、1925年12月24日に独裁体制を確立しました。以降、ムッソリーニは通常の首相とは異なる独裁権を持つ国家指導者として認識され、「ドゥーチェ」の称号もムッソリーニを指す称号として定着しました。

1943年7月25日、ムッソリーニがイタリア王国とファシスト党の全ての役職から解任されると、ドゥーチェの称号は実質的に失われました。しかし、同年9月23日にナチス・ドイツの支援によってイタリア社会共和国が建国されると、「社会共和国のドゥーチェ」として称号の使用が再開されました。

その後

1945年4月25日、イタリア社会共和国の崩壊とムッソリーニの死によって、ドゥーチェの称号は再び意味を失いました。現代では、ファシストを想起させる用語として認識されています。

関連項目

総統
総督
* カウディーリョ

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