ドクター・ロバート

ドクター・ロバート

「ドクター・ロバート」（Doctor Robert）は、イギリスのロックバンド、ビートルズが1966年に発表した楽曲です。彼らの7作目にあたるイギリス盤公式オリジナル・アルバム『リボルバー』に収録されました。ただし、アメリカではこれに先行し、キャピトル編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収められています。この楽曲はレノン＝マッカートニー名義でクレジットされていますが、実質的にはジョン・レノンが中心となって制作し、ポール・マッカートニーも一部で協力しています。

背景と主題

音楽学者のウォルター・エヴェレットは、「ドクター・ロバート」が、1966年までにビートルズが発表した楽曲の中で、薬物について最も直接的に言及している曲であると指摘しています。楽曲の核となっている「ドクター・ロバート」という人物像は、合法的な医療行為を装い、アンフェタミンなどの薬物を処方していた実際の医師たち（例えばマックス・ジェイコブソンなど）を彷彿とさせます。ジョン・レノン自身は、曲の中盤にある「Well, well, well」から始まるブリッジ部分の制作にマッカートニーが関わったと述べていますが、音楽ジャーナリストのロバート・フォンテノットは、楽曲の大半はレノンのアイデアに基づいているとしています。

「ドクター・ロバート」のモデルとなった人物については、いくつかの説が存在します。作家のバリー・マイルズは、ニューヨークに実在した医師、ロバート・フライマンを有力なモデルとして挙げています。フライマンは後に麻薬の使用が問題視され、1967年に医師免許を剥奪され、1975年にはニューヨーク医師会から追放されました。彼は1987年に死去しています。他にも、1964年夏にビートルズにマリファナを教えたとされるボブ・ディラン、オルダス・ハクスリーの小説『島』の登場人物であるロバート・マイファイル、そしてレノン、ジョージ・ハリスン、パティ・ボイド、シンシア・パウエルにLSDを混入したコーヒーを飲ませたとされる歯科医のジョン・ライリーなどが、モデル候補として名前が挙げられています。

1980年の『プレイボーイ』誌のインタビューで、ジョン・レノンは「ドクター・ロバート」が「主にドラッグやピルについての曲」であり、「僕自身のこと」であると語っています。彼はさらに、ツアー中に常に薬物を携帯していたことを明かしています。

レコーディング過程

この楽曲のレコーディングは、1966年4月17日にロンドンのEMIレコーディング・スタジオで開始されました。同時期に制作された「トゥモロー・ネバー・ノウズ」や「レイン」と比較すると、「ドクター・ロバート」のサウンドは比較的シンプルに構築されています。

まず、ジョン・レノンがリズムギター、ポール・マッカートニーがベース、ジョージ・ハリスンがマラカス、リンゴ・スターがドラムを担当し、基本的なトラック（ベーシック・トラック）が7テイク録音されました。その後、ジョージ・ハリスンによるレスリースピーカーを通した特徴的なリードギターがオーバーダビングされています。また、ブリッジ部分にはジョン・レノンのハーモニウムが加えられました。ポール・マッカートニーはピアノも演奏しましたが、最終的なミックスではカットされています。

ボーカルのオーバーダビングは4月19日に行われ、この日で楽曲は完成しました。なお、公式リリース版ではフェードアウト処理がされていますが、実際にはその後に43秒に及ぶジャム・セッションが録音されていました。

リリースとミックス

「ドクター・ロバート」は、アメリカでは1966年5月に発売された編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に一足早く収録されました。本国イギリスでは、同年8月5日にリリースされたオリジナル・アルバム『リボルバー』に収められています。

モノラル・ミックスは5月12日に、ステレオ・ミックスは5月20日にそれぞれ制作されました。その後、6月21日には新しいモノラル・ミックスも作られています。特に、アメリカ盤編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収録された初期のミックスには、ジョンの「OK, Herb」という声が入っている点が特徴です。

クレジット

この楽曲に参加した主要メンバーと担当楽器は以下の通りです。

ジョン・レノン: ダブルトラックのリード・ボーカル、リズムギター、ハーモニウム
ポール・マッカートニー: ベース、バッキング・ボーカル
ジョージ・ハリスン: ダブルトラックのリードギター、マラカス
リンゴ・スター: ドラム

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