ドコサノール

ベヘニルアルコール（1-ドコサノール）：保湿剤から抗ウイルス薬へ

ベヘニルアルコール、別名1-ドコサノールは、22個の炭素原子からなる飽和脂肪族アルコールです。古くから[化粧品]]において、保湿剤、乳化剤、増粘剤として利用されてきました。しかし、その用途はそれだけにとどまりません。2000年7月、[[アメリカ食品医薬品局]により、単純ヘルペスウイルスが引き起こす口唇ヘルペスの治療薬として承認されました。現在では、Abrevaなどの商品名で市販されています。

抗ウイルス作用機序と歴史

ベヘニルアルコールの抗ウイルス作用機序は、ヒト宿主細胞とヘルペスウイルスのエンベロープ（外膜）の融合を阻害することによって、ウイルス増殖を防ぐと考えられています。しかしながら、この作用機序は未だ完全に解明されているわけではありません。

FDAによる承認は、2000年に行われた臨床試験の結果に基づいています。プラセボ対照試験では、平均17.5時間（95％信頼区間：2～22時間）の病期短縮効果が確認されました。一方、モルモットを用いた試験では、背部への感染に対しては効果が認められませんでした。また、他の実験においても、ベヘニルアルコール軟膏の治療効果を明確に示す統計的有意差は得られていませんでした。

Abrevaは、アメリカ合衆国とカナダで市販された最初の抗ウイルス薬の一つとして知られており、ヨーロッパでは「Erazaban」、イギリスでは「Blistex Cold Sore Cream」として販売されています。しかし、2007年には治療期間を半減するという宣伝文句に関して集団訴訟が起こり、和解が成立しています。このため現在では、そのような表現は使用されていません。

副作用

ベヘニルアルコールの一般的な副作用として、頭痛が報告されています。この頭痛は軽度で、場所を選ばず生じることがあります。また、塗布部位の刺激感も報告されており、通常は軽度で自然に治癒しますが、長期間使用することで軽減される場合もあります。

まれですが、重篤なアレルギー反応も報告されています。呼吸困難、意識混濁、顔面浮腫、失神、めまい、蕁麻疹、胸痛などの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。その他、吹き出物、火傷、乾燥、かゆみ、発疹、急性下痢、疼痛、腫れなどの副作用も報告されています。

禁忌事項

妊娠中・授乳中の女性に対する安全性は確認されていません。また、12歳以下の小児への使用は推奨されていません。本剤は顔面や口唇への外用薬であり、性器ヘルペスや帯状疱疹には使用できません。治療中は、薬物相互作用はありませんが、感染拡大防止のため、化粧品の使用は避けることが望ましいです。

まとめ

ベヘニルアルコールは、口唇ヘルペスの治療薬として承認された抗ウイルス作用を持つ物質です。しかし、その作用機序は完全に解明されておらず、副作用や禁忌事項も存在します。使用に際しては、医師または薬剤師に相談することが重要です。

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