ドック・エリス

ドック・フィリップ・エリス・ジュニアとは

ドック・フィリップ・エリス・ジュニア（Dock Phillip Ellis Jr.、1945年5月11日 - 2008年12月19日）は、カリフォルニア州ロサンゼルス出身の元プロ野球投手である。彼は右投両打の選手で、主にピッツバーグ・パイレーツやニューヨーク・ヤンキースで活躍した。エリスは、その独特なプレースタイルや、試合中の薬物使用により広く知られており、特に1970年7月にはウィーリー・ランドルフやジョージ・ブレットと共にノーヒットノーランを達成したことで話題となった。

経歴

プロ入り前

エリスは少年時代からアルコールと薬物に手を出しており、地元のセミプロチーム「ピッツバーグ・パイレーツ・ルーキーズ」でプレーしていた。そこでの指導を受けた影響か、1964年にパイレーツと契約を結ぶ。しかし、契約前に自動車盗で逮捕されたため契約金は大幅に減少し、2500ドルにまで下がった。

パイレーツ時代 (1度目)

1968年、エリスはメジャーデビューを果たし、リリーフから先発投手へと転向し、1971年には19勝9敗、防御率3.06の成績でオールスターにも選出される活躍を見せた。特に1970年7月12日の対サンディエゴ・パドレス戦では、LSDを服用した状態でノーヒットノーランを達成したことが特筆に値する。この成功にもかかわらず、エリスは常に薬物の影響に悩まされていた。

ヤンキース時代

1975年、エリスはドク・メディッチとのトレードでヤンキースに移籍。1976年には17勝を挙げ、同チームのアメリカンリーグ制覇に貢献するが、その一方で問題行動が目立つようになった。エリスはオーナーを公に批判し、契約を拒否しざるを得なくなった。

アスレチックス～レンジャーズ時代

1977年にはオークランド・アスレチックスにトレードされるが、一時はクラブハウスでのトラブルや投球チャートを燃やす行動に及ぶなど、問題行動が続いた。その後テキサス・レンジャーズに移籍し、好成績を残したものの、依然として薬物問題に苦しんでいた。

メッツ～パイレーツ時代 (2度目)

1979年にニューヨーク・メッツへ移籍，但し短期間でパイレーツに復帰した。復帰後は防御率2.57という成績を残し、シーズンを終えた後に引退を決意する。彼のプロキャリアは激動のものであり、これまでの道のりは波乱に満ちていた。

引退後

引退後、エリスは薬物中毒治療を受けつつ、カリフォルニア州で依存症のカウンセラーとして働くようになる。彼は1986年にはロン・ハワード監督の映画「ガン・ホー」に出演し、完全に薬物の影響から抜け出すことを目指して取り組んだ。しかし、彼は晩年に肝硬変を患い、2008年に63歳で亡くなる。

プレースタイルと人物

エリスはストレートやカーブ、チェンジアップなど多様な球種を投じ、特に「スライディング・ファストボール」と呼ばれる独自の変化球を持っていた。また、彼は自身の意見をしっかりと主張する選手で、彼の言動はしばしば論争を引き起こした。彼はメジャーリーグにおけるアフリカ系アメリカ人の権利の擁護者として活動し、黒人選手たちの社会的な立場の向上を目指していた。

薬物問題とその影響

エリスは自身のキャリアを通じて薬物の影響を受けており、その大きな点が彼のパフォーマンスや行動に及ぼした影響は計り知れない。けれども、彼の成功と失敗は、多くの人々にとって、アスリートが直面するリスクの象徴といえよう。エリスの生涯を通じての物語は、現代スポーツにおける薬物問題に対する警鐘ともなり得るものであった。

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