ドナルド・バクスター・マクミラン

ドナルド・バクスター・マクミラン（1874年 - 1970年）は、アメリカ合衆国出身の著名な極地探検家、船員、科学研究者、そして教育者でした。

約46年に及ぶ彼のキャリアを通じて、北極および北極圏への調査航海は30回を超えました。マクミランは、その活動の中で極地における技術活用の先駆者としての側面を持ちます。北極圏で初めて無線通信や航空機を用いた探査を行い、電気の使用も試みました。また、探検の成果として、数千枚に及ぶ記録映像や写真といった貴重な資料を持ち帰り、さらには現地のイヌイットの人々の言語をまとめたイヌクティトゥット語の辞書を編纂するなど、極地研究に多大な貢献をしました。

マクミランは1874年にマサチューセッツ州プロビンスタウンで生まれました。幼少期に両親を早くに失い、メイン州フリーポートで育ちました。ボウディン大学で地質学を修め、1898年に卒業後、数年間高校で教職に就いていました。

教師時代の海難救助活動がきっかけで、探検家ロバート・E・ピアリーに認められました。マクミランは1908年のピアリー北極点探査隊に参加しますが、重い凍傷により途中で離脱しました。

帰還後、マクミランは独自の探検と研究に乗り出します。ラブラドール地方で民族学調査を行い、1913年には幻の島「クロッカーランド」を探す遠征隊を率いました。しかし、島は存在せず、隊は極地で孤立。1917年にようやく救出されました。

第一次世界大戦終結後、海軍予備役少尉に任官。戦後、自身の探検船「ボウディン号」を1921年に建造しました。ボウディン号は彼のその後の探検の拠点となり、極地からの無線通信の可能性を示す実験も成功させています。

1925年には、ナショナルジオグラフィック協会などの支援を受け、アメリカ海軍のリチャード・バード少佐が率いる飛行艇部隊との合同探検を実施しました。極地における航空機利用の初期の試みでしたが、悪天候などで成果は限定的でした。この経験は後にバードの北極点飛行に活かされたと言われます。

同時期、マクミランはラブラドール沖のスカルピン島で古代遺跡を調査し、約1000年前のノース人（ヴァイキング）の定住跡である可能性が高いと提唱しました。

1935年、長年の友人であったルック夫妻の娘、ミリアム・ノートン・ルックと結婚。ミリアム夫人も夫の探検に数回同行しています。

第二次世界大戦中の1941年、マクミランは海軍将校として志願。自身のボウディン号を軍に提供し、艦長を務めるなど戦時下の任務に貢献。1942年には海軍中佐に昇進しました。

戦後も北極圏への航海を続け、現地の支援などを行いました。長年の功績が称えられ、1954年には議会の特別法により海軍少将に特進しました。82歳となる1957年が最後の北極圏への航海でした。1970年に95歳で亡くなりました。

マクミランの功績を記念し、故郷プロビンスタウンの中央埠頭はマクミラン埠頭と命名されています。また、1927年にはボーイスカウトアメリカ連盟の新設された「名誉スカウト」の一人に選ばれるなど、探検家として様々な栄誉を受けています。

ドナルド・バクスター・マクミランは、極地探検のパイオニアとして、科学、技術、教育の発展に貢献し、北極圏の理解を深める上で重要な役割を果たした人物です。

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