ドネツ川の戦い

ドネツ川の戦い

ドネツ川の戦いは、2022年5月5日から13日にかけて、ドンバス地方の戦略的要衝であるドネツ川を挟んで繰り広げられた、ロシア軍とウクライナ軍による激しい攻防戦です。

背景

ドネツ川は、ウクライナ東部を流れる重要な河川であり、ドンバス戦争中からウクライナ軍の防衛線とされてきました。この川を支配することは、部隊の展開、農業、そして主要都市への給水において、大きな戦略的優位性をもたらします。ロシア軍は、ドンバス地方の包囲を企図し、ドネツ川の渡河作戦を実行しました。

戦闘経過

5月5日

ロシア軍は、ドロニフカ付近で渡河を試みましたが、ウクライナ軍の戦車部隊によって阻止されました。この戦闘で、ロシア軍は複数の車両と橋頭堡を失いました。

5月8日

ロシア軍は、ビロホリウカ付近に浮橋を建設し、大規模な渡河を試みました。しかし、ウクライナ軍の偵察部隊がこれを察知し、ドローンによる偵察で浮橋の位置を特定。砲撃と空爆により、浮橋は破壊されました。この攻撃で、ロシア軍は多数の車両を失い、渡河は頓挫しました。

5月12日

ロシア軍は、セレブリャンカ付近に新たな浮橋を建設しましたが、これもウクライナ軍によって破壊されました。

死傷者と損失

この一連の戦闘で、ロシア軍は壊滅的な損害を被りました。戦争研究所（ISW）によれば、ビロホリウカ付近での渡河作戦に参加した約550人の兵士のうち、485人が死傷したとされています。さらに、80以上のロシア軍装備が破壊されました。一部報道では、死者数は1000人以上と推定されています。ウクライナ軍は、ロシア軍の戦車、装甲車、架橋装備などを破壊したと発表しました。

ロシア軍は、計4つの浮橋を建設しましたが、すべて破壊され、3つの橋頭堡もすべて失いました。この戦闘で、ロシア軍の2個大隊戦術群（BTG）が壊滅したと報告されています。また、第12独立親衛工兵旅団の指揮官であるデニス・コズロフ大佐が戦死しました。

反応と分析

ドネツ川での大敗は、ロシア国内でも大きな波紋を呼びました。親ロシア派の軍事ブロガーからも、ロシア軍の指揮能力と戦略に対する批判が相次ぎました。一部のブロガーは、この作戦を「愚かさ」や「サボタージュ」とまで非難しました。西側の軍事アナリストも、ロシア軍の戦術的な拙劣さに驚きを示し、司令官の焦りが作戦の失敗につながったと分析しました。

余波

ドネツ川での敗北は、ロシア軍の攻勢に大きな影響を与えました。ルハーンシク州での前進は遅れ、ドネツィク州北部への進軍も停滞しました。その後、セベロドネツクが陥落した後、リシチャンシクが包囲される中で、ロシア軍はドネツ川の渡河に成功し、プリビリヤを制圧しましたが、この作戦は包囲戦術により河川渡河の必要性を軽減した結果でした。

関連項目

ミサイル巡洋艦モスクワの沈没
ドンバスの戦い

ドネツ川の戦いは、ウクライナ戦争における重要な転換点の一つであり、ロシア軍の弱点を浮き彫りにした戦いとして記憶されるでしょう。

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