ドベルド・デル・ラーゴ

ドベルド・デル・ラーゴ：歴史と自然が織りなす村

ドベルド・デル・ラーゴ（Doberdò del Lago）は、イタリア共和国フリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア州ゴリツィア県に位置する基礎自治体（コムーネ）で、人口は約1,300人です。この地域は、スロベニアとの国境に接しており、その地理的特性と歴史的な背景から、独特の文化が育まれてきました。

地理

ドベルド・デル・ラーゴは、トリエステから北西に約28km、ゴリツィアから南西に約12km、モンファルコーネから北に約4kmの場所に位置しています。コムーネの東側はスロベニアとの国境であり、ミレン＝コスタニェヴィツァ市と隣接しています。この地域は、カルスト台地の西部に位置し、独特の地形が広がっています。特に、コムーネの東部には南北に走る峡谷（ドル谷）があり、イゾンツォ川流域とアドリア海を結ぶ重要な交通路となっています。この谷は、歴史的に戦略上の要所として争奪の舞台となりました。

ドル谷の西側には「ドベルド・カルスト」、東側には「トリエステ・コメン・カルスト」と呼ばれる台地が広がっています。ドベルド・デル・ラーゴの大部分は、ドベルド・カルスト台地上に位置しています。台地の南側にはポリエと呼ばれる地形が見られ、ドリーネ（窪地）に地下水が溜まるとドベルド湖が出現します。ドベルド湖周辺は自然保護区に指定されており、豊かな自然が保たれています。

気候と地震

ドベルド・デル・ラーゴは、イタリアの気候分類では「zona E」に属し、度日は2365GGです。また、地震リスク階級では「zona 3」（低い地震リスク）に分類されています。

主要な集落

ドベルド・デル・ラーゴの本村は、コムーネの西北部に位置し、ドベルド・カルスト台地上にあります。本村の北東約2kmにはマルコッティーニがあります。ドル谷にはパルキシェなどの集落があり、ジャミアノは本村から約4km離れたコムーネの東南部、ドル谷南部に位置しています。ジャミアノは、海沿いの都市モンファルコーネやサン・ジョヴァンニに近い場所にあります。

歴史

この地域には、7世紀頃からスラブ系の人々が住み始めました。中世には、ランゴバルド王国やフランク王国、アクイレイア総大司教領などの支配を受け、15世紀にはゴリツィア伯国の統治下に入りました。ドベルドという村の名前が文書に初めて登場するのは1179年で、当初は「Dobradan」と記されていました。これは、スロベニア語の地名「Doberdob」（オークの良木を意味する）の誤記であると考えられています。1500年以降、ドベルドはハプスブルク家の所領となり、約400年間オーストリア帝国領となりました。

第一次世界大戦中、イゾンツォ川一帯は、イタリア王国とオーストリア＝ハンガリー帝国の間で激しい戦いの舞台となりました。ドベルドの村はこの戦いで完全に破壊され、多くの住民が命を落としました。特に、第六次イゾンツォの戦いの一部である「ドベルドの戦い」は、この地が激戦地であったことを物語っています。第一次世界大戦後、この地域はイタリア王国に割譲され、トリエステ県に編入されました。ファシスト政権下ではイタリア化政策が推進されました。

第二次世界大戦中には、スロベニア人民解放戦線による反ファシズム抵抗運動が展開され、多くの住民がユーゴスラビアのパルチザンとして戦いました。1945年、ユーゴスラビア人民軍によって一時的に解放されましたが、その後、イギリス・アメリカ連合軍が進駐しました。1947年にイタリアの統治下に戻り、ゴリツィア県に属することになりました。

行政と社会

ドベルド・デル・ラーゴには、以下の分離集落（フラツィオーネ）があります。Devetachi、Jamiano、Marcottini、Visintini、Parkisce、Fabbrici、Micoli、Issari、Ferletti、Bonetti、Berne 。村の人口の多くはスロベニア系住民であり、スロベニア語による教育が行われています。政治的には、1950年代から1980年代にかけてイタリア共産党の支持が厚く、スロベニア系マイノリティの左派政党であるスロヴェーヌ連合の支援を受けていました。現在でも、左翼系政党の支持が高い傾向にあります。

人口と交通

国立統計研究所（ISTAT）によると、ドベルド・デル・ラーゴの人口は、居住地区ごとに集計されています。交通に関しては、国道SS55が主要な道路として利用されています。

文化と観光

第一次世界大戦の戦跡は、この地域を訪れる人々にとって重要な観光資源となっています。スロベニア人住民の多くは、オーストリア軍に参加してイタリア軍と戦い、その中で生まれた軍歌「Doberdob」は、スロベニア人の間で広く歌い継がれています。また、スロベニア人作家プレジホフ・ヴォランツが著した小説「Doberdob」は、第一次世界大戦におけるスロベニア人兵士の苦悩を描いた作品として広く知られています。ハンガリー人の間でも、同名の軍歌が歌われており、2009年にはハンガリー人犠牲者を記憶する礼拝堂が建立されました。

姉妹都市

ドベルド・デル・ラーゴは、以下の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

プリヴァチーナ（スロベニア）：1977年より
ブレッド（スロベニア）：1998年より

ドベルド・デル・ラーゴは、その複雑な歴史と文化、美しい自然が融合した魅力的な場所です。第一次世界大戦の戦跡やドベルド湖などの見どころが多く、多様な文化と歴史に触れることができます。

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