ドミニカ共和国の歴史

ドミニカ共和国の歴史

ドミニカ共和国の歴史は、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島の東側を占めるこの国の複雑な道のりを物語っています。先コロンブス期から現代に至るまで、多くの変遷を経てきました。

先コロンブス期

紀元前4000年から1000年の間、南アメリカのギアナ地方からアラワク族（タイノ人）が移住しました。彼らは島をアイティ、ボイオ、キスケージャと呼び、五つの部族集団に分かれていました。ヨーロッパ人の到来によりタイノ人は姿を消しましたが、その文化はドミニカの食、言語、家族構成、道徳観などに今も影響を与えています。征服時のインディヘナの数は、イスパニョーラ島全体で100万から300万人程度と推測されています。

スペイン植民地時代

1492年、クリストーバル・コロン（コロンブス）がヨーロッパ人として初めてこの島に上陸し、「小さなスペイン」（イスパニョーラ島）と名付けました。1496年には、コロンブスの弟バルトロメによってサント・ドミンゴが建設され、新大陸初のスペイン植民地となりました。1502年にニコラス・デ・オバンドーが総督に就任し、スペインは植民地との貿易を統括する通商院をセビヤに設置しました。また、エンコミエンダ制が導入され、先住民は金鉱山で酷使され、疫病も蔓延し、多くが命を落としました。その後、サトウキビのプランテーションが導入されると、アフリカから多数の黒人奴隷が連れてこられました。

1526年からベネスエラはサント・ドミンゴのアウディエンシアの管轄下に置かれていましたが、18世紀に入るとヌエバ・グラナダ副王領やベネスエラ総督領へと行政権が移管され、司法権もカラカスのアウディエンシアに移りました。一方、イスパニョーラ島の統治は疎かになり、イギリスの侵攻も失敗するなど、混乱が続きました。島の西部が無人状態になると、フランス人海賊が定住し、1697年のライスワイク平和条約により、島の西側はフランス領サン＝ドマング（現在のハイチ）、東側の3分の2がスペイン領サント・ドミンゴ（現在のドミニカ共和国）となりました。

ハイチの占領

18世紀末、サン＝ドマングでハイチ革命が起こり、1795年のバーゼルの和約でイスパニョーラ島全島がフランス領となりました。しかし、1801年にはトゥーサン・ルーヴェルチュールの攻撃によって島全体が占領され、奴隷が解放されました。トゥーサンは島を統治しようとしましたが、ナポレオン軍の侵攻により捕らえられ獄死。その後、ハイチはフランス軍を破り独立し、サント・ドミンゴもその一部となりました。1809年、サント・ドミンゴは再びスペインの支配下に戻り、1814年のパリ条約で正式にスペイン領となりましたが、ラテンアメリカでの独立運動の高まりを受け、1821年11月30日にスペイン人ハイチ共和国として独立しました。しかし、内戦状態となり、1822年1月には再びハイチの占領下に入りました。

再独立と再植民地化

ハイチの支配に対する反発が高まり、1844年2月27日、フアン・パブロ・ドゥアルテ、マティアス・ラモン・メラ、フランシスコ・デル・ロザリオ・サンチェスらが率いる革命軍がハイチ人を一掃し、ドミニカ共和国として独立しました。しかし、ハイチとの度重なる戦争に耐えかねた保守派のサンタナは、1861年にスペインに併合を要請。しかし、この措置は国民の反発を招き、1865年に再び独立を達成しました。その後、アメリカ合衆国への併合を二度求めましたが、上院に拒否され、1875年にハイチとの平和条約が結ばれ、独立国家としての道を歩み始めました。

独立国家として

1882年、ウリセス・ウーローが大統領となり、独裁政治を開始しました。彼は交通網整備や外国資本導入を試みましたが、政策の失敗により多額の負債を抱え、1899年に暗殺されました。その後、国内の政治的対立が激化し、債務国から軍艦が派遣される事態となりました。

アメリカ軍政期

1906年、ドミニカ共和国はアメリカ合衆国との間で、関税徴収権と債務返済を保証する協定を結び、事実上の保護国となりました。第一次世界大戦時、アメリカは列強がこの地域に介入するのを防ぐため、1916年にドミニカ共和国を占領しました。米軍支配下で経済基盤が強化され、警察や国軍が組織されましたが、これが後に軍部独裁の種となりました。1924年、アメリカ軍は撤退し、オラシオ・バスケスが大統領に選出されました。

トルヒーヨ時代

1930年、ラファエル・トルヒーヨ将軍がクーデターを起こし、独裁政権を樹立しました。彼は富を独占し、個人崇拝を強要、首都名をトルヒーヨ市に改名しました。1937年には、ハイチ人労働者を虐殺しました（パセリの虐殺）。トルヒーヨはカトリック教会やエリート層の支持を受け、反共政策を掲げアメリカの支持も得ていましたが、1961年に暗殺され、首都名はサント・ドミンゴに戻されました。

ボッシュ維新政権とドミニカ内戦

1962年、30年ぶりに大統領選挙が行われ、1963年にフアン・ボッシュが大統領に就任しました。ボッシュは憲法を改正し、社会改革を進めようとしましたが、クーデターによって追放されました。その後、反動政治が続き、1965年には立憲派がクーデターを起こし、内戦が勃発。アメリカ軍が介入し、最終的に立憲派は鎮圧されました。

ドミニカ内戦以降

1966年、ホアキン・バラゲールが大統領に就任し、強権政治を行いました。1978年からはアントニオ・グスマン、1982年からはサルバドール・ホルヘ・ブランコが大統領を務めましたが、経済状況は悪化しました。1986年、再びバラゲールが大統領となり、経済は回復に向かいました。1996年にはレオネル・フェルナンデスが大統領に就任し、2000年にはラファエル・イポリト・メヒーア・ドミンゲス、2004年には再びフェルナンデスが大統領になりました。フェルナンデスの後、2012年からダニーロ・メディナが大統領を務めました。

ドミニカ共和国は、その複雑な歴史を経て、現在に至っています。独立と再植民地化、独裁政治、内戦など多くの困難を乗り越え、その過程で築かれた独自の文化が現在も息づいています。

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