アウディエンシア

アウディエンシア：スペイン植民地における司法・行政・立法の要

アウディエンシアは、スペイン・カスティーリャ王国における最高司法機関、王立大審問院を指します。特に、新大陸のスペイン植民地においては、司法、行政、立法を司る王室機関として、副王と並ぶ重要な役割を果たしました。

アウディエンシアの種類

アウディエンシアは大きく分けて2つの種類がありました。

アウディエンシア・ビレイナル: 副王領の中心地に設置され、副王が長官を務めるもの。
アウディエンシア・プレシデンシアル: 副王から独立し、同等の機能を有するもの。

歴史

新大陸で最初のアウディエンシアは、1511年にイスパニョーラ島のサントドミンゴに設置されました。その後、1528年にメキシコシティ、1538年にパナマ、1542年にリマとグアテマラシティ、1548年にヌエバ・ガリシア、1549年にサンタフェ・デ・ボゴタ、1661年にブエノスアイレスなど、各地に設置されていきました。

アウディエンシアは、スペイン植民地における統治機関の中で、最も長く安定して存続した機関と言えるでしょう。

機能

アウディエンシアの規模と権力は地域によって異なりましたが、一般的にはインディアス枢機会議に従属し、長官（プレシデンテ）1名と数名の聴訴官（オイドール）が置かれ、管轄地域の控訴審を担当しました。また、副王と同様に、暫定的な地域立法も認められており、国王の名のもとに統治も行いました。

ただし、植民地時代を通じて一貫した法的地位を持っていたわけではなく、副王領の新設や新しいアウディエンシアの設置に伴い、従属関係や管轄地域は流動的でした。

アウディエンシアの官吏は、様々な禁令によって縛られていました。商取引やエンコミエンダの所有、冠婚葬祭への参加などは許されていませんでした。在職期間は副王よりも長いため、副王が交代しても行政活動が継続されることが多く、植民地における王室の最高位の官職である副王を補佐する諮問機関としての機能を持つと同時に、副王の権力の絶対化を抑止する機能も備えていました。

このような権力分散は、スペイン王室による安定した植民地管理の特徴的な政策と言えるでしょう。

アウディエンシアは、スペイン植民地統治において、司法、行政、立法の面で重要な役割を果たした機関であり、その存在は植民地の社会構造や政治体制に大きな影響を与えました。

参考文献

* 『ラテン・アメリカを知る事典』（大貫良夫監修、平凡社、ISBN 4-582-12625-1）

もう一度検索