ドライミストとは？意味をやさしく解説

ドライミストとは

ドライミストとは、水を非常に細かい霧状にして噴射する装置です。この微細な霧が蒸発する際に周囲の熱を奪う気化熱を利用して、局所的な冷却効果を得ることを目的としています。一般的なミストと異なり、ドライミストは水滴の粒径が16μmと非常に小さいため、噴射された霧は素早く蒸発し、人体や衣服が濡れるのを最小限に抑えることができます。この技術は、「噴霧」「霧散布」「ミスト散布」とも呼ばれ、英語では「mist spraying」と表現されます。

ドライミストの歴史

霧を利用した冷却技術は古くから存在し、エアウォッシャーを備えた蒸発冷却システムが、明治時代や大正時代の建築物にも採用されていました。しかし、現代のドライミストの直接的な発案者は、当時名古屋大学の教授であった辻本誠氏です。2002年に屋上緑化に関する会合に参加した際、辻本氏は、より手軽で低コストな冷却方法として、直接水を散布し気化熱を利用するアイデアを思いつきました。その後、経済産業省の支援を受け、名古屋大学、清水建設、能美防災などの企業との共同開発を経て実用化されました。2007年には、家庭向けの小規模なドライミスト装置も開発され、その普及が進んでいます。

ドライミストの冷却効果

能美防災の調査によると、ドライミストは周辺の気温を2～3度下げることが可能です。さらに、この冷却効果を得るために必要なエネルギー消費は、家庭用エアコンの約1/20と非常に少ないことがわかっています。このエネルギー効率の高さは、ドライミストが環境に優しい冷却手段として注目される理由の一つです。

散布量と粒径

ドライミストの散布量は、クスノキ林の真夏の蒸散量を参考に、1平方メートルあたり毎分7.5ccを目安に設計されています。ただし、実際の散布量は、設置場所の特性や要求される冷却効果に合わせて調整されます。噴射される霧の粒径は16μmと非常に小さく、この微細な粒子が迅速な蒸発を可能にしています。

主な設置場所

ドライミストは、その冷却効果と省エネルギー性から、様々な場所に設置されています。

日本国内

都市部: 東京都では、秋葉原クロスフィールド、六本木ヒルズ、新丸ビル、東京スカイツリーなど、多くの商業施設や公共施設に設置されています。
駅: 熊谷駅、相模鉄道二俣川駅など、駅のホームや周辺施設にも設置され、夏の暑さ対策に貢献しています。
イベント: 熊谷うちわ祭や高校総体などのイベント期間中には、仮設のドライミストが設置されることもあります。
その他: 北海道函館市の五稜郭タワー、愛知県の安城産業文化公園デンパーク、名古屋大学のキャンパス、名古屋駅前などにも設置されています。
高速道路: 首都高速道路の山手トンネル内にも、渋滞時の気温上昇を緩和する目的で試験的に設置されています。

日本国外

中国広州市のBRT主要駅、シンガポールの空港や市内、香港MTRの地上駅、フランス国鉄マルセイユ駅など、海外の公共交通機関や施設にも設置されています。

家庭用ドライミスト

近年では、一般住宅の庭に設置可能な家庭用ドライミスト製品も開発されています。これにより、個人宅でも手軽に涼しい空間を作り出すことが可能になりました。

ドライミスト