ドラム缶女性焼殺事件

2000年 4月4日未明、愛知県名古屋市で発生した、2人の女性が拉致され、山中で焼殺された強盗殺人・死体損壊事件です。この事件は、金銭トラブルをきっかけに、残虐な手口で女性2名の命が奪われたという、非常に痛ましいものでした。

事件の概要

事件は、名古屋市千種区の路上で、被害者A（男性、喫茶店経営者）の妻であるB（当時65歳）と、その義妹であるC（当時59歳）が拉致されたことから始まりました。

犯人グループは、Aが経営する喫茶店の常連客であり、グループの主犯格であるNとKは、Aが振り出した約束手形の回収を依頼されたことをきっかけに、Aの拉致を計画。当初はAの殺害を目的としていましたが、拉致時にBとCも巻き添えとなり、3人を監禁するに至りました。しかし、Aは逃走したため、残されたBとCを愛知県瀬戸市の山中に連れ込み、ドラム缶に入れてガソリンをかけ、生きたまま焼き殺すという、非常に残虐な手口で殺害しました。

その後、犯人グループは遺体をチェーンソーで切断し、骨を砕いて山中に遺棄するという、徹底した証拠隠滅を図りました。

犯人グループ

この事件には、以下の6人の犯人が関与していました。

元死刑囚N (1969年生まれ、事件当時30歳): 主犯格。計画立案と実行を主導。取り込み詐欺で設立した会社の経営者で、金融業を営む実父からの依頼で被害者Aの手形取り立てを行っていた。
元死刑囚K (1964年生まれ、事件当時36歳): 主犯格。Nと共に犯行を主導。中古車販売業を営んでいた。過去に交通事故で右足を切断している。
受刑者W (事件当時40歳): 自動車部品販売会社社長。死刑を求刑されたが無期懲役が確定。Nの義兄で、事件当時は多額の借金を抱えていた。
受刑者X (事件当時37歳): 自動車部品販売会社従業員。Wの弟。死刑を求刑されたが無期懲役が確定。Wと共に死体損壊を実行した。
受刑者Y (事件当時45歳): 会社役員。懲役12年が確定。拉致に関与したが、殺害現場には向かう途中で逮捕された。
受刑者Z (事件当時28歳): 懲役12年が確定。拉致に関与し、Yと共に殺害現場に向かう途中で逮捕された。

事件の背景

犯行グループは、取り込み詐欺を計画し、そのために設立した会社「シムス」を利用していました。しかし、詐欺がうまくいかず、資金繰りに困窮していたため、被害者Aからの手形回収を試み、それが失敗したことが今回の事件の引き金となりました。

犯人グループは、生命保険に加入し、仲間内で保険金を受け取ることで、金銭を得ようとしていたことも明らかになっています。

事件前には、W,X,Y,Zの4人に対し生命保険をかけ、N,Kは「誰が死ぬんだ？死ぬなら事故死だ」「お前らの誰かが死ねば俺たちに高い保険金が入る」などと述べ、4人を脅していました。

裁判の経過

裁判では、NとKが主犯格と認定され、死刑判決が下されました。WとXには無期懲役、YとZには懲役12年の判決が下されました。

NとKは、一審・二審ともに死刑判決を受け、最高裁もこれを支持したため、死刑が確定しました。また、W,X,Y,Zの4人も、一審・二審の判決が確定しました。

第一審

N・K両被告人: 死刑判決
W・X両被告人: 無期懲役判決
Y・Z両被告人: 懲役12年判決

控訴審

N・K両被告人: 死刑判決維持
W・X両被告人: 無期懲役判決維持
Y・Z両被告人: 懲役12年判決維持

上告審

N・K両被告人: 死刑判決確定
W・X・Y3被告人の上告棄却（判決確定）

死刑執行

2009年 1月29日、NとKの死刑が名古屋拘置所で執行されました。

Nは、死刑執行前に『フライデー』編集部と文通をしており、その中で「遺書」を残していました。

Kは、死刑執行直前に参議院議員の福島瑞穂宛に手紙を送り、事件の真相や冤罪の可能性を訴えました。

事件の影響

この事件は、その残虐性から社会に大きな衝撃を与え、死刑制度の是非や犯罪における人間の心の闇について、議論を呼び起こしました。

また、犯行グループが取り込み詐欺を行っていたことや、生命保険を悪用しようとしていたことなど、現代社会における闇の部分を浮き彫りにしました。

この事件は、私利私欲のために残虐な犯罪を犯す人間の存在、そして、その背景にある社会の歪みについて、私たちに深く考えさせる出来事だったと言えるでしょう。

ドラム缶女性焼殺事件