ドルジーナ

ドルジーナ：中世スラヴの従士団

ドルジーナ（дружина）は、中世スラヴ社会において公（クニャージ）に属する軍隊を指します。その語源はスラヴ語の「друг」（仲間・友人）に由来し、日本語では従士団、親衛隊などと訳されます。キエフ・ルーシ時代の重要な要素であり、公と同様に社会構造を支える存在でした。

キエフ・ルーシにおけるドルジーナの役割

キエフ・ルーシの軍隊は、ドルジーナの他に、戦時に動員される部隊や傭兵部隊が存在しました。ドルジーナは常時戦闘準備ができており、公の地位獲得を助け、助言者としての役割も果たしました。絶え間ない戦争の中で、国民を守る信頼できる軍隊を率いる公は高く評価され、ドルジーナは公にとって重要な存在でした。

公はドルジーナを尊重し、十分な贈与を与えました。キエフ・ルーシ期は身分制社会でしたが、ドルジーナへの加入は身分間の移動を可能にする手段の一つでもありました。

構成員と人数

ドルジーナの民族構成は多様で、ヴァリャーグ、ルーシ族、フィン人、テュルク系民族、ポーランド人、マジャル人などが見られました。構成人数は不明確ですが、数百人を超えていなかったと考えられています。922年のイブン・ファドラーンの記述によれば、キエフの公の館には400人の勇者がいたとされています。ドルジーナは軍の核であり、騎兵隊の主要な構成員として、主要な軍事行動に参加しました。

ドルジーナの職務

ドルジーナの主な役割は軍事行為への従事ですが、それ以外にも公の依頼を実行したり、従者や護衛として公に同行しました。下位のドルジーナは公の評議会には参加できませんでしたが、軍事評議会には参加を許可されていました。時代と共にドルジーナの性格は変化し、初期には公の一門に従属する軍でしたが、次第に臨時募集によって集められた連隊となり、最終的には都市所属の連隊となりました。

11世紀から12世紀にかけて、ドルジーナは上位層（ドルジーナ・スタレーシャヤ）と下位層（ドルジーナ・モロドシャヤ）に分かれました。上位層はボヤーレ（貴族）階級を構成し、軍事・民事の高位の役職を占め、公の評議員やヴェーチェの構成員となりました。下位層にはオトロク、デトスキエ、クメトィ、グリヂなどの区分があり、それぞれ異なる役割を担っていました。

社会的身分と公との関係

ドルジーナは公の収入によって扶養され、戦利品の一部を得ることができました。上位層のドルジーナは、自分に所属するドルジーナを持つこともありました。ドルジーナが殺害された場合、犯人には高額な賠償金が課されました。公が死亡すると、ドルジーナは後継者に譲渡されるのが基本でしたが、新旧のドルジーナの間で競争が起こることもありました。

分領制時代までのドルジーナは土地と結びつかず、公とのみ関係を持っていました。ドルジーナと公は自由な契約関係で結びついており、ドルジーナは自由に加入・脱退し、他の公の元へ行くことができました。しかし、キエフ大公国の分化に伴い、ドルジーナも各地に定住地を獲得し、土地を所有するようになりました。その結果、ドルジーナ（並びにボヤーレ）は、初期には公の戦友でしたが、最終的には新しい貴族階級となり、公に敵対するようになりました。

ポーランドのドルジーナ

ポーランドにもドルジーナが存在し、同様の役割を果たしていました。

ドルジーナは、中世スラヴ社会において、公を支え、社会の安定に貢献した重要な存在でした。その構成、職務、社会的身分は時代と共に変化し、最終的には貴族階級へと発展しました。

もう一度検索