ドルト信仰基準

ドルト信仰基準について

ドルト信仰基準、またはドルト信条は、1618年に行われたドルトレヒト会議で制定された非常に重要な信仰の基準です。この文書は主にオランダ改革派教会における神学的対立の結果として生まれました。特に、ヤーコブス・アルミニウスの教えを支持する者たちが提出した『建白書』（Remonstrantie）が契機となり、神学的論争が火花を散らせることとなりました。

1. 背景

アルミニウス主義は、神の恩恵や救いの範囲について異なる見解を提出しました。この主義の支持者たちは、1610年に政府に対してアルミニウス主義の承認を求めましたが、これが導火線となり、1618年のドルトレヒト会議が催されたのです。この会議では、彼らの意見が否定され、代わりに改革派の教理が正式に確認されました。

2. ドルト信仰基準の内容

ドルト信仰基準は主に五つの基本的な特質を持つ教義で構成されており、これを覚えやすい頭文字から「TULIP」または「チューリップ」と呼ぶことがあります。以下にその主要な教理を簡潔に説明します。

1. 全的堕落（Total depravity）

堕落した人間は、その本性からすべてにおいて腐敗しており、自らの意志で神に仕えることができないとされます。これは人間の限界を認め、神の恩恵が絶対的であることを示しています。

2. 無条件的選び（Unconditional election）

神は、特定の人々を無条件に救いへと選び、他の人々を滅びに定めているという教えです。この考えは、人間の努力や行いに依存しない神の主権を強調しています。

3. 制限的・限定的贖罪（Limited atonement）

キリストによる贖いは、神が選んだ者たちのためのものであるという立場です。すなわち、救いが広がることはなく、特定の者にのみ適用されるという主張です。

4. 不可抵抗的恩恵（Irresistible grace）

予定された人々は、神の恵みを拒むことができないという教えです。これは神の意志が絶対的であるとする立場から来ており、悔い改めや信仰の成立にも神の介入が必要であることを示しています。

5. 聖徒の堅忍（Perseverance of the saints）

一度選ばれた者は、最後まで堅く信仰を持ち続け、必ず救われるという信念です。この教理は信仰者に希望を与えると同時に、その信仰の確実性を強調しています。

3. 影響と意義

ドルト信仰基準は、カルヴァン主義の核心的な教義として広く理解されていますが、実際にはアルミニウス主義に対抗する形で作られたものであることを忘れてはなりません。この基準は、宗教改革における神学的論争の重要な部分を形成し、後の思想や宗派への影響を与えました。

ドルト信仰基準は、カルヴィニズムの理解を深めるための指針を提供し、信仰の深さや神の計画を探求する礎となっています。これにより、多くの信徒が神の意志や恩恵の大きさを再認識し、自らの信仰を深める機会を得ているのです。

参考文献

• - 『カルヴィニズムの5特質』エドウィン・H・パーマー
• - 『カルヴィン主義予定論』ローレン・ベットナー

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