ドルム・シュネフタの冊子

『ドルム・シュネフタの冊子』は、散逸したアイルランドの古写本であり、『キーン・ドロマ・シュネフタ』（アイルランド語: Cín Dromma Snechta）あるいは『レボル・ドロマ・シュネフタ』（アイルランド語: Lebor Dromma Snechta）とも呼ばれています。

概要

この冊子は残念ながら現存していませんが、『赤牛の書』、『レンスターの書』、『バリーモートの書』、『レカンの書』、エジャートン写本88といった、アイルランドの重要な写本の多くに引用されていることから、かつて実際に存在していたことが明らかになっています。これらの写本に引用されたテキストは、古アイルランド語で書かれているのが特徴です。

冊子には、以下のような神話や説話が収録されていたと考えられています。

『クー・フーリンの誕生』
『モンガーンの誕生』
『ブランの航海』
『コンラの異界行』
『ダ・デルガの館の破壊』（版または要約）
『エーディンへの求婚』
『スカータハの言葉』
"the siege of the men of Fálchae"
* 『アイルランド来寇の書』の初期の版

名称の由来

古アイルランド語の "cín" は、ラテン語の "quinio" （五）に由来する言葉で、5枚の羊皮紙を折りたたんで作った小冊子を意味します。また、"lebor" は現代アイルランド語では "leabhar" と綴られ、「本」を意味する一般的な単語です。

『ドルム・シュネフタの冊子』という名前は、かつてドルム・シュネフタ（現代のモナハン県 Drumsnat）の修道院でこの冊子が編纂されたか、あるいは保存されていたことに由来します。

編纂時期

17世紀に『アイルランド史』を執筆した歴史家のキーティングは、この冊子を直接参照することはなかったものの、その存在は認識しており、5世紀の聖パトリックの伝道以前に編纂されたものと考えていました。

19世紀の学者オカリーは、『レンスターの書』の中にこの冊子について言及した傍注を発見しました。判読が難しい部分もありましたが、傍注によれば、この冊子はコナハト王である「Dauíの息子」によって編纂されたものでした。「Dauíの息子」について、オカリーは「9人の人質のニール」の甥であり、聖パトリックと同時代の人物でもある Dauí Galach の息子 Ernín である可能性と、5世紀末に没したコナハト王 Dauí Tenga Uma の息子である可能性を指摘しています。フランシス・J・バーンによれば、オカリーが挙げた2人の「Dauíの息子」は実際には同一人物であると考えられています。

スイスのケルト学者トゥールナイゼンは、1912年から1913年にかけてこの冊子の内容復元を試み、説得力のある成果を上げました。彼は、この冊子の編纂時期を8世紀初頭ではないかと提案しました。一方で、9世紀や10世紀ではないかとする学者もいましたが、現代ではこの説は疑問視されています。

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