ドレーク海峡

ドレイク海峡

ドレイク海峡は、南米大陸最南端に位置するホーン岬沖と、南極大陸の北に連なるサウス・シェトランド諸島との間に広がる広大な海峡です。この海峡は、広義には南極海の一部をなし、大西洋と太平洋を結ぶ重要な通路となっています。その地理的特徴から、地球上で最も過酷で荒れた海域の一つとして知られています。

地理と特徴

ドレイク海峡は、その広大さで特に有名です。最も狭い地点でもその幅は約650キロメートルにも達し、この圧倒的な広さゆえに「世界で最も幅の広い海峡」としてギネス世界記録に認定されています。

海峡が位置する南緯60度付近は、しばしば「絶叫する60度 (shrieking sixties)」という異名で呼ばれるほど、一年を通じて海が荒れることで知られています。これは、この緯度帯が常に強い偏西風と温帯低気圧の通り道となっていることに加え、周囲に広大な陸地が存在しないため、風や海流が遮られることなく、その力を最大限に発揮できることに起因します。これにより、巨大な波浪が発生しやすく、船旅にとっては非常に困難な海域となっています。

ドレイク海峡のすぐ南側、サウス・シェトランド諸島と南極半島の間には、ブランスフィールド海峡が広がっています。このブランスフィールド海峡とその周辺地域は、南極観測を行う各国の基地が集中しており、「南極観測基地のメッカ」とも呼ばれる場所です。ドレイク海峡は、これらの基地へアクセスするための主要な航路の一つでもあります。

歴史

ドレイク海峡の名前は、16世紀のイギリスの私掠船船長で探検家でもあったフランシス・ドレイクに由来しています。海峡の存在が初めて西欧社会に知られることになったのは、1578年の出来事に端を発します。ドレイクが南太平洋を航海中、激しい暴風雨に遭遇し、やむなく南へ流されてホーン岬付近に漂着しました。この時、それまで知られていなかった南の広大な海域を通じて、太平洋から大西洋へと出るルートがあることを、図らずも発見したのです。

それ以前の時代、南米大陸南端部のティエラ・デル・フエゴ島は、伝説上の未知なる南方大陸「メガラニカ」の一部であると信じられていました。そのため、大西洋と太平洋を行き来する唯一の航路は、フェルディナンド・マゼランが発見したとされるマゼラン海峡のみだと考えられていたのです。

ドレイクの偶然の発見によって、より南にも海峡が存在することが示唆されましたが、ドレイク自身が意図的にこの海峡を「航海」したわけではありませんでした。ドレイク海峡を初めて意図的に航海したと公式に記録されているのは、オランダ人探検家ウィレム・スホーテンが船長を務めた1616年の航海とされています。この航海により、ホーン岬が島であり、その南側に広大な海域（後のドレイク海峡）が存在することが確実となり、大西洋と太平洋を結ぶ新たな航路の存在が確立されました。

このように、ドレイク海峡は地理的に重要な位置を占め、歴史的にも大航海時代の発見と探検の物語に深く関わる場所です。その広大さと荒々しさは、自然の力の偉大さを示す象徴でもあります。

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