メガラニカ

メガラニカ：謎の大陸、その歴史と真実

メガラニカ (Magallanica) とは、かつて南半球に存在すると信じられていた、巨大な仮説上の大陸です。 南極大陸を中心として広がり、その範囲は現代のオーストラリア大陸などをはるかに超える規模だったと推測されています。 別名 テラ・アウストラリス (Terra Australis、南方大陸) とも呼ばれ、後にオーストラリア大陸を指すようになりましたが、現在でもフォーマルな場面で使われることがあります。未発見であることを強調して テラ・アウストラリス・インコグニタ (Terra Australis Incognita、未知の南方大陸) と呼ばれることもありました。

名称の由来と広がり

「メガラニカ」という名称は、フエゴ島を発見したフェルディナンド・マゼラン (Magallanes) に由来する比較的新しい呼称です。 17世紀の中国で作成された世界地図、『坤輿万国全図』や、それを参考に作成された日本の地図などにもこの名称が用いられており、日本においては「テラ・アウストラリス」よりも広く知られていたようです。漢字表記は「墨瓦蠟泥加」、「墨瓦蠟尼加」、「黒瓦蠟尼加」など、複数の表記が見られます。

メガラニカの存在を信じた時代

古代ギリシャ の時代から、地球が球体であるという考えが一部の知識人の間で存在していました。しかし、当時知られていた大陸は北半球に集中しており、地球のバランスが不安定に見えることから、南半球にも巨大な大陸が存在するとの推測が生まれました。

大航海時代 に入ると、南半球で新たな陸地が発見されるようになりました。1520年、マゼランの艦隊がフエゴ島を発見した際には、これが南極大陸まで続く巨大な大陸の最北端であると考えられました。マゼラン海峡は、大西洋と太平洋を繋ぐ唯一の航路として、当時の地図に多く描かれ、この大陸は「メガラニカ」と名付けられました。しかし、後にフエゴ島が島であることが確認され、メガラニカの範囲は修正されることになります。

ニューギニア島も当初、メガラニカの一部だと考えられていました。 1606年にウィレム・ヤンツがオーストラリア大陸西海岸を発見し、1646年にアベル・タスマンがニュージーランドを発見すると、メガラニカがついに発見されたと、多くの人々が信じるようになりました。 この時代、メガラニカはもはや架空の大陸ではなく、実在する新大陸として認識されていたのです。


クック船長の航海とメガラニカの終焉

ジェームズ・クックの航海によって状況は一変しました。クックは1768年から1771年にかけての第1次航海でニュージーランドを周航し、島であることを証明しました。1770年にはオーストラリア東海岸を発見し、オーストラリア大陸がメガラニカの一部である可能性は低いと結論づけられました。こうして、メガラニカは再び未発見の大陸へと戻っていきました。しかし、高緯度地域にメガラニカが存在するという考えは根強く残りました。

クックはイギリス王立協会からの依頼を受け、1772年から1775年にかけて第2次航海を行い、南極圏にまで到達しましたが、巨大な大陸は発見できませんでした。 南極大陸の存在は徐々に否定されるようになり、高緯度地域に未発見の大陸があるという考えも、探検の進展と共に影を潜めていきました。1820年頃には南極大陸が発見されましたが、それはかつて想像されていたメガラニカよりもはるかに小さく、別個の大陸であると認識されました。

地図におけるメガラニカ

初期の世界地図には、しばしばメガラニカが描かれていました。これらの地図は、当時の地理的知識の限界と、未知の南方大陸への期待が反映されたものでした。 しかし、探検が進み、地理的知識が深まるにつれて、メガラニカは地図から姿を消していきました。


結論

メガラニカは、地理学的発見の歴史において重要な役割を果たした、仮説上の大陸です。 その存在は後に否定されましたが、地理学の発展、探検家たちの努力、そして当時の人々の世界観を理解する上で、メガラニカは欠かせない存在なのです。 メガラニカという物語は、未知への探求心と、科学的な探求によっていかに世界像が変化していくのかを示す、興味深い歴史の証となっています。

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