ドロテア・ダグラス・チェンバース

ドロテア・ダグラス・チェンバース（Dorothea Douglass Chambers, 1878年9月3日 - 1960年1月7日）は、イングランド出身の女子テニス選手です。彼女は20世紀初頭にテニス界で目覚ましい活躍を見せ、特にウィンブルドン選手権では女子シングルスで7度の優勝を果たしました。これは女子選手の中で歴代3位タイの記録です。旧姓はドロテア・キャスリーン・ダグラス（Dorothea Katherine Douglass）でしたが、ロバート・ランバート・チェンバースとの結婚により現在の名前になりました。親しみを込めて「ドリー」（Dolly）という愛称で呼ばれることもありました。

ドロテアのテニスキャリアは、1903年のウィンブルドン選手権での初優勝から始まりました。その後1907年まで、彼女は5年連続で決勝に進出しました。結婚後の1907年からは、夫の姓を冠して「ドロテア・ランバート・チェンバース」と表記されることが多くなりました。1908年のロンドンオリンピックでは、女子シングルス決勝で同国のドラ・ブースビーを破り、金メダルを獲得しました。結婚後、2人の子供をもうけましたが、出産後も競技生活を続け、1910年と1911年、そして1913年と1914年のウィンブルドンで連覇を果たしました。しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発し、ウィンブルドン選手権は一時中断されました。

1919年にウィンブルドン選手権が再開されると、40歳を迎えていたドロテアも再び大会に参加しました。この年、彼女は女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスの全てで決勝に進出しましたが、いずれも準優勝に終わりました。特に女子シングルス決勝では、フランスのスザンヌ・ランランと2時間5分に及ぶ激戦を繰り広げ、2度のマッチポイントを逃して敗れました。この試合は、女子テニス界にランランの時代が到来するきっかけとなりました。1920年の決勝でもランランと対戦しましたが、完敗を喫し、この試合が彼女にとって最後の決勝進出となりました。この時の41歳10ヶ月という年齢は、ウィンブルドン女子シングルス決勝進出者の最年長記録として現在も残っています。

引退後も、ドロテアは47歳で全米選手権に遠征し、準々決勝まで進出しました。彼女の長い競技生活を通じて、ウィンブルドン選手権女子シングルスでは、11度の決勝進出（7勝4敗）という記録を打ち立てました。これは、ブランチ・ビングリー、マルチナ・ナブラチロワに次ぐ歴代3位の記録です。また、女子シングルスでの7勝は、ヘレン・ウィルス・ムーディが8度目の優勝を果たすまで、ウィンブルドン最多優勝記録でした。ドロテアは1960年1月7日、81歳でその生涯を閉じました。彼女の功績は称えられ、1981年に国際テニス殿堂入りを果たしました。

その後の女子テニス界では、マルチナ・ナブラチロワが9度優勝し、ヘレン・ウィルス・ムーディ、シュテフィ・グラフが7勝を記録し、ドロテアの記録は歴代3位タイに後退しましたが、ウィンブルドンの歴史において彼女が偉大な選手の一人であることに変わりはありません。また、ビリー・ジーン・キングも、6度優勝し、ドロテアに次ぐ選手として歴史に名を刻んでいます。これらの5人の女子選手は、ウィンブルドンの歴史に輝かしい足跡を残しました。

ウィンブルドン選手権の成績

女子シングルス優勝：7勝（1903年、1904年、1906年、1910年、1911年、1913年、1914年）
女子シングルス準優勝：4度（1905年、1907年、1919年、1920年）
女子ダブルス準優勝：3度（1913年、1919年、1920年）
混合ダブルス準優勝：1度（1919年）

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