ドロール委員会

ジャック・ドロール委員長と欧州統合の進展：欧州委員会の黄金時代

ジャック・ドロール委員長の下、欧州委員会は1985年から1994年までの3期にわたって活動し、欧州統合の歴史において極めて重要な役割を果たしました。その期間は、欧州連合の形成と発展に多大な貢献をした、まさに欧州委員会の黄金時代と評することができます。

ドロール委員会は、単一欧州市場の完成、ユーロ導入に向けた経済通貨統合の礎となる計画の策定、そして東欧諸国の加盟に向けた準備など、数々の重要な成果を残しました。これらの功績により、ドロール委員長は「ユーロの父」と呼ばれることもあります。

ドロール委員会の業績：

単一市場の完成： ドロール委員会は、域内市場の障壁を取り除くことに重点を置き、商品、サービス、資本、人の自由な移動を促進しました。これは、欧州経済の活性化と統合に大きく貢献しました。
経済通貨統合： ドロール委員長は、3段階からなる経済通貨統合計画を提言する「ドロール報告書」を発表しました。この報告書は、ユーロ導入に向けた重要な指針となり、後のマーストリヒト条約にも大きな影響を与えました。
欧州連合の発足： 1993年にマーストリヒト条約が発効し、欧州連合が誕生しました。ドロール委員会は、その発足時の最初の委員会として、欧州統合の新たな段階を担いました。
東欧諸国の加盟準備： ベルリンの壁崩壊後、ドロール委員会は東欧諸国の欧州連合加盟に向けた土台作りに着手しました。これは、2004年の東欧諸国の大規模加盟につながる重要な一歩となりました。
社会的なヨーロッパ： ドロール委員長は、社会的な側面を重視したヨーロッパ像を提唱し、イギリス労働党の欧州統合支持を強化するなど、欧州の政治情勢にも大きな影響を与えました。

ドロール委員会の期間と主要な出来事：

ドロール委員会の3期は、それぞれ異なる課題と成功を収めました。重要な出来事を年代別に見ていきましょう。

1985年: グリーンランドの欧州共同体からの脱退、スペインとポルトガルの加盟交渉開始、欧州司法裁判所の画期的な判決など。
1986年: スペインとポルトガルの加盟、単一欧州議定書の調印、欧州旗の採用など。
1987年: ローマ条約調印30周年、単一欧州議定書の発効、トルコを加盟候補国とする決定など。
1988年: ドロール報告書の発表、第一審裁判所の設立など。
1989年: ベルリンの壁崩壊、東欧諸国の民主化と欧州への統合への動き開始など。
1990年: ドイツ再統一、シェンゲン協定の調印など。
1991年: ソ連の崩壊、欧州委員会人道援助局（ECHO）の設置など。
1992年: マーストリヒト条約の調印、欧州経済領域協定の調印など。
1993年: 欧州単一市場の成立、マーストリヒト条約の発効、欧州連合の発足など。
1994年: 欧州通貨機構の設立、欧州経済領域の発足、オーストリア、フィンランド、スウェーデンの加盟交渉終了など。

ドロール委員会の構成と委員の政治的傾向：

ドロール委員会は、3期を通じて委員の構成に一定の安定性と政治的バランスを保ちました。委員の政治的背景は多様でしたが、欧州統合という共通の目標に向かって協力しました。

事務総長：

3期を通じて、デイヴィッド・ウィリアムソンが欧州委員会事務総長を務めました。

ドロール委員会の評価：

ドロール委員会は、その後の欧州委員会の活動にとって重要な基準となるほどの業績を上げました。単一市場の完成、ユーロ導入への道筋付け、東欧諸国の加盟に向けた準備など、その功績は欧州統合の歴史に深く刻まれています。一方で、後続の委員会は不正問題や低評価に苦しんだことから、ドロール委員会の成功は際立っています。その後の欧州統合の進展において、ドロール委員会が果たした役割は計り知れないものがあります。

参考文献:

欧州委員会サイト（英語、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語）
* その他関連文献

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