ドンバス (指揮艦)

ドンバス：ウクライナ海軍の指揮艦、その波乱の生涯

ドンバスは、ソビエト連邦海軍によって設計された304型工作艦を基盤とする、ウクライナ海軍の指揮艦です。ソ連崩壊後、ウクライナ海軍に所属し、その長い艦歴の中で、数々の重要な出来事に関与してきました。この艦は、単なる軍艦としてだけでなく、ウクライナの歴史と深く結びついた存在と言えるでしょう。

起源と初期の活動

ドンバスは、1970年代初頭から軍事作戦に積極的に投入されました。ソ連黒海艦隊の一員として活動した後、艦名は「クラスノドン」に変更されましたが、2001年には最終的に「ドンバス」と改名されました。ウクライナ海軍に所属してからは、国際演習や国内の軍事パレード、航海に繰り返し参加し、その存在を国内外に示しました。

2007年11月には、セヴァストポリ近郊でハリケーンに遭遇するも、ロシアのタグボートの支援によって無傷で切り抜けることができました。また、2009年には海軍就役40周年を迎え、その記念として、ウクライナ国防省から近代化改修のために約400万フリヴニャの予算が割り当てられました。2011年には海上試験の第一段階を合格し、その活動はさらに活発になりました。

クリミア危機とドンバス戦争

2014年、クリミア危機が発生すると、ドンバスはロシア海軍によって一時的に拿捕されました。しかし、その後、ウクライナのタグボートによってオデッサに回航されました。同年、ドンバス戦争が激化する中、ドンバスはマリウポリ沖で親ロシア派のドローンを撃墜し、紛争の最前線で重要な役割を担いました。2016年にはオデッサで火災が発生し、損傷を受けましたが、修理され再び任務に復帰しました。

ケルチ海峡通過とアゾフ海への進出

2018年、ドンバスは、タグボート「コレッツ」と共にオデッサを出航し、多数のロシア海軍部隊に護衛されながらケルチ海峡を通過しました。この航海は、ウクライナ海軍がアゾフ海における存在感を示すための重要な一歩でした。ウクライナの砲兵船「クレメンチューク」と「ルブヌィ」が合流し、ドンバスはアゾフ海に新設された基地の一部となりました。この出来事は、当時の大統領であったペトロ・ポロシェンコ氏も自身のFacebookで祝福し、アゾフ海におけるウクライナの戦略的重要性を強調しました。

マリウポリ包囲戦とドンバスの終焉

しかし、ドンバスの活躍は長くは続きませんでした。2022年、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、マリウポリが包囲されると、ドンバスは攻撃を受けました。同年4月6日に公開された衛星画像では、マリウポリ港でドンバスが激しい煙に包まれている様子が確認されました。ウクライナ国防省は4月16日、ドンバスがマリウポリ包囲戦中に破壊されたことを公式に認めました。

まとめ

ドンバスは、その長い艦歴の中で、数々の歴史的出来事に関わってきました。ソ連時代からウクライナ独立、そしてロシアとの紛争に至るまで、常に時代の変化とともにその役割を変えながら、ウクライナの海軍力を支え続けました。最終的には、マリウポリ包囲戦という過酷な状況の中でその生涯を終えましたが、ドンバスの歴史は、ウクライナの海軍史において重要な一章として、後世に語り継がれることでしょう。

この艦が経てきた歴史は、単なる軍艦の物語にとどまらず、ウクライナという国家の激動の歴史そのものを象徴していると言えるかもしれません。

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