ドン・グルーシン

ドン・グルーシン（Don Grusin、1941年4月22日 - ）は、アメリカ合衆国出身の音楽家であり、音楽プロデューサー、作曲家、そして卓越したピアニストとして知られています。音楽家としてのキャリアをスタートさせる前は、経済学の教授という異色の経歴を持っています。

コロラド州リトルトンで生まれたドン・グルーシンは、音楽一家で育ちました。兄であるデイヴ・グルーシンもまた著名なピアニストであり、幼少期からピアノを習い始めました。しかし、音楽だけでなく、バスケットボールや陸上競技にも打ち込む活発な少年時代を送ります。コロラド大学に進学後は経済学を専攻し、修士号を取得。その後、メキシコのハリスコ州グアダラハラ自治大学でフルブライト・フェローシップを得て研究活動に従事しました。アメリカに帰国後は、フットヒル・カレッジで講師を務める傍ら、徐々に音楽活動に時間を割くようになります。

ピート・エスコヴェード（シーラ・Eの父）やコーク・エスコヴェード（元サンタナ）兄弟が率いるアステカに参加したことが、彼の音楽キャリアにおける大きな転機となりました。そこでクインシー・ジョーンズに見出され、1975年には彼の日本ツアーに同行。以降、ロサンゼルスを拠点に音楽活動を展開していきます。

クラーク・テリー、ズート・シムズ、カール・フォンタナ、ゲイリー・バートンといったジャズ界の巨匠たちとの共演を通じて、その名を高めていきました。1978年には、リー・リトナーらとグループ「フレンドシップ」を結成し、エレクトラ・レコードからアルバムをリリース。兄デイヴをはじめ、クインシー・ジョーンズ、ビリー・エクスタイン、ペギー・リー、トム・スコット、リー・リトナー、セルジオ・メンデス、渡辺貞夫、ミルトン・ナシメント、ジルベルト・ジル、ドリ・カイミ、パティ・オースティンなど、ジャンルを超えた数々の著名なミュージシャンと共演。音楽プロデューサー、作曲家としてもその才能を発揮し、フュージョン・シーンを牽引する存在となっていきました。

1981年には、日本JVCから初のリーダーアルバム『ドン・グルーシン』を発表。1984年には『10K―LA』をリリースし、その後、兄デイヴが設立したGRPレコードに移籍。定期的にアルバムを発表しました。

2003年9月には、ロサンゼルスで旧友たち（LAオールスターズ）とのライブを行い、その模様を収録したアルバム『ザ・ハング〜ウィズ・LA フレンズ』を翌年に発表。このアルバムはグラミー賞にノミネートされ、高い評価を受けました。2005年には、初のピアノ・ソロ・アルバム『ファイアー・アンド・レイン〜ソロ・ピアノ』をビデオアーツミュージックからリリース。2006年には、シャカタクのピアニストであるビル・シャープとのコラボレーションアルバム『ジオグラフィー』をJVCより発表しました。

彼の音楽は、ジャズ、フュージョン、ラテンなど、多様な音楽的要素を取り入れ、洗練されたハーモニーと美しいメロディーが特徴です。ピアニストとしての卓越した技術はもちろんのこと、作曲家、プロデューサーとしての才能も高く評価されており、長年にわたり音楽界に貢献し続けています。

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