ナイム・フラシャリ

ナイム・フラシャリ：アルバニアの国民的詩人

ナイム・フラシャリ（1846年5月25日 – 1900年10月20日）は、アルバニアの詩人、知識人、役人、そして民族解放運動家として知られています。彼は、アルバニア語の発展と近代アルバニア文学の確立に大きく貢献し、国民的詩人として尊敬されています。

生涯

フラシャリは、オスマン帝国領ヤニナ州の寒村フラシャリで生まれました。彼の兄弟には、著名なアルバニア人革命家であるサミとアブデュルがいます。フラシャリはベクタシュ教団の一員であり、幼少期からアラビア語、オスマン・トルコ語、ペルシア語の手ほどきを受け、ペルシア文学を学びました。

1865年、一家は現在のギリシャ北部にあたるヤニナに移り、ゾシマイア学校で古典ギリシア語、イタリア語、フランス語、そして啓蒙思想を学びました。1871年にイスタンブールへ赴き、新聞社に勤務しますが、結核に罹患したため一時帰郷します。回復後、再びイスタンブールに戻り、その後ベラトやサランダに移ってオスマン帝国の官公庁で役人として数年間務めました。しかし、結核が再発し、症状が悪化したため、バーデンで療養することになります。

その頃、兄アブデュルが参加したプリズレン連盟が1878年に結成されました。フラシャリは連盟でアルバニア語文献の創出、編纂、出版に貢献し、アルバニア語の普及と教育に生涯を捧げました。彼はイスタンブールで数冊の詩集を出版した後、1886年以降はルーマニアのブカレストで十数冊の詩集を出版しました。1900年、フラシャリはイスタンブールのカドゥキョイ地区で亡くなりました。

業績

フラシャリは、ベクタシュ教団の思想を背景としたイスラーム神秘主義詩を数多く発表しました。若い頃から、サアディー、ハーフェズ、ルーミーといったペルシアの詩人たちに影響を受け、ペルシア語で2作の詩集を刊行しました。また、母語であるアルバニア語でも詩を発表し、アルバニア語におけるイスラーム神秘主義詩の泰斗とされています。特に、1898年に発表されたカルバラの出来事をモチーフにした宗教詩文『Qerbelaja』は高く評価されています。

フラシャリが生まれ育った村落を背景とした1886年刊行の牧歌『Bagëti e Bujqësi』は、素朴なアルバニアの羊飼いの田園生活を描き、ギリシアやオリエント的な要素が混ざり合っています。この作品は、フラシャリの最高傑作の一つとされ、自身の郷愁やアルバニアの民族、そして大地への想いが表現されています。また、オスマン帝国軍を打ち破った中世アルバニアの英雄スカンデルベグの生涯を格調高く詠った叙事詩『Istori e Skënderbeut』を1898年にブカレストで発表しました。

フラシャリは、アルバニア語を文化語として高め、普及させた功績から、近代アルバニア文語および近代アルバニア文学の父と評されています。さらに、国民的詩人として広く認識されており、彼の肖像はアルバニアの紙幣に描かれています。また、アルバニア政府が授与する栄誉勲章であるナイム・フラシャリ勲章は、彼の名にちなんで名付けられました。ペルシア文学への貢献を称え、イランはフラシャリの肖像が描かれた切手を発行しました。

ナイム・フラシャリは、アルバニアの文化と文学に多大な影響を与えた人物として、今もなお敬愛されています。

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