サアディー

サアディー・シラーズィー：ペルシア文学の巨匠

サアディー・シラーズィー（1210年頃 - 1291年/1292年）は、13世紀のイランを代表する詩人、散文家です。激動の時代を生きた彼の作品は、今日でもペルシア文学における最高傑作として世界中で愛されています。

生涯

サアディーは、ファールス州の州都シーラーズで生まれました。彼の雅号「サアディー」は、当時のサルグル朝の君主に由来するとされています。幼い頃に父を亡くしたサアディーは、バグダードのニザーミーヤ学院でイスラーム諸学を修めました。その後、約30年にも及ぶ放浪の旅に出ます。インド、中央アジア、アラビア半島、エジプト、エチオピア、北アフリカなど、様々な地域を訪れたとされています。

1256年、サアディーはシーラーズに帰郷し、詩作活動を開始します。翌年には代表作である『果樹園』（Būstān）、1258年には『薔薇園』（Gulistān）を相次いで発表し、その名声を確立しました。シーラーズに帰還してからの彼は、イルハン朝の高官たちとも親交を深め、彼らから敬愛を受けました。

晩年はシーラーズ郊外に庵を結び隠遁生活を送りましたが、没後には彼の名を冠したサアディー廟が建設され、現在ではシーラーズの観光名所となっています。また、イランではサアディーの記念日が設けられ、彼の功績を称えています。

作品

サアディーの代表作は、『薔薇園』（ゴレスターン）と『果樹園』（ブースターン）です。

薔薇園（ゴレスターン Gulistān）：散文と詩を組み合わせた形式で、教訓的な物語や逸話が収められています。社会生活や人間関係における知恵、道徳的な教えなどが、美しい文体で表現されています。
果樹園（ブースターン Būstān）：韻文形式で書かれた作品で、正義、慈悲、謙虚さなど、道徳的なテーマが扱われています。物語や寓話を通して、人生の教訓を伝えています。

これらの作品は、単なる教訓書としてだけでなく、文学作品としても高く評価されており、ペルシア語の豊かな表現力とサアディーの卓越した才能が堪能できます。

名前と情報源

サアディーの本名については諸説あり、確定的な情報はありません。しかし、イブン・フワティーの記録やジャーミーの支持する説など、いくつかの有力な説が存在します。後世の人々は、サアディーのことを親しみを込めて「シェイフ」（長老）と呼んでいました。

サアディーの作品は、その教訓的な内容と美しい文体から、長年にわたり多くの人々に読み継がれてきました。彼の作品は、ペルシア文学だけでなく、世界の文学においても重要な位置を占めています。サアディーの言葉は、時代を超えて、私たちに人生の指針を与え続けてくれるでしょう。

関連項目

シーラーズ
サアディー廟

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