ナサニエル・セイヴァリー

ナサニエル・セイヴァリーの生涯と小笠原諸島の移民団

ナサニエル・セイヴァリー（日本名：瀬堀 南山）は、1794年にアメリカ・マサチューセッツ州ブラッドフォードで生まれた。彼は1810年代から船員としてのキャリアをスタートさせ、後にイギリスの商船に乗り組むことになる。セイヴァリーは1829年にハワイのホノルルに寄港する際に事故で右手指を負傷し、その後しばらく治療を受けることになる。この療養生活の際、小笠原諸島への入植計画が進行中であることを知り、イタリア出身のマテオ・マザロが指導する移民団への参加を決意する。

1830年6月26日、ナサニエルは一緒に移民した5人の欧米人と25人の太平洋諸島出身者と共に、小笠原諸島の父島扇浦に上陸した。移民団は初めは扇浦に住むものの、次第に大村や奥村へと分かれて生活するようになる。彼らは農作物の栽培や家畜の飼育を始め、捕鯨船や商船に向けてその産物を売ることで生計を立てていった。また、セイヴァリーは自らの故郷に手紙を送り、兄弟姉妹との連絡を保っていた。

しかし、彼らの入植生活は順調ではなく、ウエスチ・アメリカ人移民同士の間での対立が発生した。特に、マザロとの関係が悪化し、1839年には暗殺計画も持ち上がるものの、彼の人望の無さから暴力沙汰には至らなかった。やがて1842年にはマザロがハワイに去り、体制は転換し、セイヴァリーが島民のリーダーとしての役割を果たすことになった。

1853年5月、アメリカのマシュー・ペリー提督が日本に向かう途中に父島に寄港。そこでセイヴァリーを移民団の指導者として選び、植民政府樹立の計画が進められた。1861年12月には、江戸幕府の命を受けた外国奉行とともに来島し、同島が日本の領土であることを確認する契約を結んだ。その後、1863年には日本人住民全員に避難命令が出されるが、セイヴァリーは島に留まり、島民に製糖や製塩の技術を教える活動を続けた。

セイヴァリーは1874年に亡くなった。彼は父島奥村の自宅庭に埋葬されたが、後に大根山墓地に改葬された。彼がこの地に残した影響は大きく、1875年には息子のホレースが日本と再会する際、彼の死を告げる出来事があった。明治8年には日本政府からの依頼で、船が彼の故郷を訪問し、セイヴァリー家はその後「瀬堀」と改姓することとなる。

1980年に作家の有吉佐和子が偶然にナサニエルの曾孫ジュリー・セイヴァリーと再会し、彼女の家族の歴史を聞く機会もあった。彼女によれば、小笠原諸島の移民たちは日本に帰化した後にも、各々異なる姓に改名したという。戦後、GHQから帰島が許可された欧米系島民が多い中、セイヴァリー家の歴史はまさに小笠原諸島における文化の交流を物語っている。

ナサニエル・セイヴァリーの物語は、彼一人の移住に留まらず、小笠原諸島の歴史や文化形成の一端を担っていたことを示している。彼の人生を通じて、異国の地に根付いた者たちの努力と挑戦が、今の小笠原諸島を形作る要素となったのだ。

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