ナチュラルウーマン (2017年の映画)

ナチュラルウーマン：社会の偏見に挑む、力強い魂の物語

2017年、チリ、ドイツ、スペイン、アメリカ合作で制作された『ナチュラルウーマン』（原題：Una mujer fantástica）は、セバスティアン・レリオ監督による感動的なドラマ映画です。この作品は、第67回ベルリン国際映画祭で上映され、銀熊賞（脚本賞）とLGBT映画に対するテディ賞を受賞。さらに、第90回アカデミー賞外国語映画賞において、チリ代表として出品され、見事受賞を果たしました。これはチリ映画史上初の快挙であり、世界中から大きな注目を集めました。

物語の中心人物は、マリーナ。サンティアゴで暮らす、トランスジェンダーの歌姫です。彼女は初老のオルランドと愛し合い、幸せな日々を送っていました。しかし、ある日、オルランドは予期せぬ事故で亡くなってしまいます。

オルランドの死後、マリーナは警察の尋問を受け、オルランドの家族からも厳しい言葉を浴びせられます。彼らがマリーナに向ける視線は、偏見と誤解に満ちたものでした。オルランドの息子はアパートからの転居を要求し、妻は夫の車の返還を求め、葬儀への参加を拒否します。これらの行動の根底には、マリーナのトランスジェンダーであるという事実への深い偏見がありました。マリーナは、社会からの冷たい視線と、自身の過去にまつわる誤解に苦しみます。

苦悩するマリーナは、歌の師匠を訪ね、導きを求めます。そこで彼女は「愛を求めるな、与えるのだ」という言葉を受け取ります。この言葉は、マリーナの心に大きな力を与えました。

その後、マリーナは、自身の全裸写真を強要する女性刑事や、彼女を嘲笑うオルランドの息子たちにも動じることなく、自身の進むべき道を歩んでいきます。彼女はオルランドの葬儀場を訪れ、焼かれる前の恋人の遺体に別れを告げます。

そして、マリーナは夜のステージに立ち、「オンブラ・マイ・フ」を歌い上げます。彼女の歌声は、苦しみを乗り越えた力強さと、揺るぎない意志を表現していました。この歌声は、マリーナ自身の生き様、そして彼女を取り巻く社会への問いかけとして響き渡ります。

ダニエラ・ベガがマリーナを演じ、彼女の繊細で力強い演技は、観客の心を深く揺さぶります。他のキャストも素晴らしい演技で、物語に深みを与えています。

『ナチュラルウーマン』は、社会の偏見に苦しみながらも、自分自身を愛し、強く生きようとするトランスジェンダー女性の物語です。それは、同時に、愛、喪失、そして生きることの意味を問いかける、普遍的なヒューマンドラマでもあります。アカデミー賞受賞という栄誉に輝くこの作品は、見る者の心に深く刻まれる、忘れ難い感動を与えてくれるでしょう。Rotten Tomatoesでは28件のレビューで93％の高い支持率、Metacriticでは8件のレビューで96/100という高評価を得ており、批評家からも高い評価を得ています。

この映画は、私たちに、社会の多様性を受け入れ、お互いを理解し合うことの大切さを改めて気づかせてくれるでしょう。そして、どんな困難な状況にあっても、自分自身を信じ、生き抜くことの尊さを教えてくれます。

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