ナックルダスター

ナックルダスター：拳に宿る力の増幅器

ナックルダスターは、拳に装着することで打撃力を高める武器の総称です。「メリケン」「メリケンサック」「ブラスナックル」など、様々な呼び名で知られています。漫画『リングにかけろ』に登場する「カイザーナックル」もその形状から派生した名称と言えるでしょう。広義には、拳を保護する籠手なども含まれます。

打撃力の増強と拳の保護

ナックルダスターの主要な目的は、拳による打撃力を強化し、同時に拳を保護することです。指の骨や関節といったデリケートな部分を保護しつつ、金属などの硬い素材を用いて強力な打撃を加えることが可能です。多くのナックルダスターは、掌底で金属部分を支える構造になっており、打撃時の反動による拳への衝撃を軽減する工夫が凝らされています。

金属製のナックルダスターは、素手では危険な硬い目標物（ハードターゲット）を破壊する用途にも用いられてきました。重量のある金属、特に真鍮製のものが「ブラスナックル」と呼ばれたりしますが、実際には鉄などの合金製のものも多く存在します。

巧妙な偽装と法的リスク

コンパクトなナックルダスターは、ポケットに容易に収納できるサイズで設計されているものも多くあります。「ペーパーウエイト」「ペンホルダー」「ベルトのバックル」「軽量ダンベル」など、一見すると武器とは気づかれないような偽装が施されたものも存在します。中には、指輪のように見えるものまであります。しかし、これらの携帯は軽犯罪法や迷惑防止条例に抵触する可能性があり、注意が必要です。

類似武器：歴史と多様な進化

ナックルダスターと似た機能を持つ武器は、古くから世界各地で存在しました。

鉄貫: 室町時代から使用された日本の武器で、刃が付いたものもあります。「懐剣」とも呼ばれ、宮本武蔵も使用したとされています。
鉄甲: 琉球古武道の武器で、元々は農耕用の蹄[[鉄]]として用いられていたとされています。
ヒマンテス: 古代ギリシアのボクシングで使用された拳に巻き付ける革紐です。その後、より硬い革紐（スファイライ）や金属を仕込んだもの（カエストス）へと進化していきました。ヒマンテスは拳の保護を主目的としていましたが、硬い物体を殴ると使用者自身も怪我をする可能性がありました。革のベルトで代用することも可能です。パンクラチオンでは類似のセスタスが使われていました。

刃物とナックルダスターの融合

打撃部分に刃物や棘を備えたナックルダスターも存在します。日本の鉄拳や中国の圏などがその例です。また、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて使用された一部のトレンチナイフには、護拳部を兼ねたナックルダスターが組み込まれていました。さらに、1860年代には拳銃、ナイフ、ナックルダスターを一体化した「アパッチ・リボルバー」が登場しました。

参考資料

『改訂増補 刀工総覧』川口陟・飯田一雄（校訂）　刀剣春秋新聞社・宮帯出版社
『金工事典』若山泡沫・飯田一雄（校訂）　刀剣春秋新聞社・宮帯出版社
『アイテム・コレクション』 安田均・グループSNE 富士見文庫
『図説 西洋甲冑武器事典』三浦権利 柏書房
『武器辞典』 市川定春 新紀元社
『武器と防具・日本編』 戸田藤成 新紀元社
『武器と防具・中国編』 篠田耕一 新紀元社
『武器と防具・西洋編』 市川定春 新紀元社
『武勲の刃』 市川定春・怪兵隊 新紀元社
『魔導具事典』 山北篤・稲葉義明 新紀元社
『図説・日本武器集成』決定版 歴史群像シリーズ 歴史群像シリーズ編集部 編 学習研究社
『図説・中国武器集成』決定版 歴史群像シリーズ 歴史群像シリーズ編集部 編 学習研究社
『刀剣甲冑手帳』 刀剣春秋編集部 編　刀剣春秋新聞社・宮帯出版社
『中国武術兵器法』 青木嘉教 愛隆堂
『隠し武器総覧』 名和弓雄 壮神社
『図解隠し武器百科』 名和弓雄 壮神社
『【決定版】図説忍者と忍術 忍器・奥義・秘伝集』 歴史群像シリーズ 歴史群像シリーズ編集部 編 学研マーケティング
『【決定版】忍者・忍術・忍器大全』 都市鉄道研究会 著 歴史群像編集部 編 学習研究社

関連項目

武器
格闘技
手
暗器
籠手
ボクシンググローブ
オープンフィンガーグローブ

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