ナッソー・ストリート (マンハッタン)

ナッソー・ストリートは、ニューヨーク市マンハッタン区のフィナンシャル・ディストリクトに位置する、歴史と多様な顔を持つ通りです。ウォール街を南端とし、北のスプルース・ストリートへと一方通行で続いています。周辺には、ペース大学、ニューヨーク市庁舎、ブルックリン橋などのランドマークが点在し、賑わいを見せています。

歴史

この通りの名前は、17世紀にオランダの王子であり、後にイングランド王となったウィリアム3世（ナッサウ家のウィリアム）に由来します。1696年以前には既にその名が付けられていました。20世紀初頭まで、ナッソー・ストリートはニューヨークの主要な新聞社の多くがオフィスを構える場所として知られていました。

20世紀後半には、ショッピング客の増加を目的として、一時的に車両の通行が禁止された時期もありました。ナッソー・ストリートは、フルトン＝ナッソー歴史地区の境界の一部を形成しており、この地区は歴史的建造物が多く残るエリアとして保護されています。

ニューヨーク・タイムズ（旧ニューヨーク・デイリー・タイムス）は、当初ナッソー・ストリート113番地にオフィスを構えていました。その後、1854年に138番地、1858年にはパーク・ロウ41番地に移転し、ニューヨークの新聞社として初めて自社ビルを所有しました。

切手収集の中心地として

20世紀初頭から中期にかけて、ナッソー・ストリートは切手収集家にとって特別な場所でした。1915年頃には、すでに多くの切手販売業者がこの通りに広告を掲載していました。1930年代には、切手収集の人気がピークを迎え、ナッソー・ストリートには多くの切手やコインの販売店が軒を連ね、「切手通り」として知られるようになりました。

世界恐慌の時代には、株式市場が低迷する中で、切手は価値が下がらず、換金性の高い資産として注目されました。ナッソー・ストリート116番地には切手センタービルが、87番地には地下鉄切手ショップ（現在はペンシルベニア州アルトゥーナに移転）がありました。

しかし、1970年代に入ると、多くの切手販売業者がこの地を離れ、ナッソー・ストリートはかつての切手取引の中心地としての面影を失いました。ハーマン・ハースト・ジュニアによる著作は、切手収集産業の黄金時代を描いたもので、ナッソー・ストリートの切手街としての隆盛を今に伝えています。

周辺情報

ナッソー・ストリート沿いには、歴史的な建築物もいくつか存在します。63 ナッソー・ストリートやアトランティック・ナショナル・バンク（ニューヨーク市）などは、その代表例です。

また、近隣にはアン・ストリートなど、マンハッタンの歴史的な通りが数多く存在し、散策を楽しむことができます。

ナッソー・ストリートは、金融街の一角でありながら、かつては新聞社や切手商が集まるなど、多様な歴史を持つ通りです。現在ではその面影は薄れつつありますが、ニューヨークの歴史を語る上で欠かせない場所の一つと言えるでしょう。

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