ナッソー襲撃 (1703年)

ナッソー襲撃：カリブ海の悲劇

1703年10月、スペイン継承戦争の余波がカリブ海の英領ニュープロビデンス島、特にその首都ナッソーを襲いました。フランスとスペインの私掠船によるこの襲撃は、ナッソーにとって壊滅的な出来事となり、その後の島の運命を大きく左右することになります。

襲撃の背景

当時、サンティアーゴ・デ・クーバとサン＝ドマング（現在のハイチ）の植民地政府は、ナッソーを目の上のたん瘤と見なしていました。そこで、両植民地は共同で襲撃を計画。ブラス・モレノ・デ・モンドラゴンとクロード・ル・シェネーの指揮のもと、スペイン兵とフランスの海賊（バッカニア）を乗せた2隻のフリゲート艦がナッソーに向けて派遣されました。

襲撃の顛末

襲撃隊はナッソーに到着すると、たちまち攻撃を開始。抵抗はあったものの、数的に優位な襲撃隊は瞬く間にナッソーを制圧しました。彼らは100人以上の住民を殺害し、80から100人を捕虜にしました。さらに、22門の大砲を鹵獲し、ナッソーの要塞を徹底的に破壊しました。総督エリス・ライトウッドを含む捕虜と、拿捕した13隻の船は戦利品としてサンティアーゴ・デ・クーバへと連れ去られました。

襲撃後のナッソー

襲撃を生き延びたイングランド人住民は、危険が去るまで森に身を隠していました。しかし、いざ戻ってみると、そこにあったのは廃墟と化したナッソーの姿でした。家々は破壊され、生活基盤は失われ、住民たちは他の集落への移住を余儀なくされました。

イングランド本国はこの事態をほとんど顧みず、ナッソーの惨状を知る由もありませんでした。翌年、エドワード・バーチがナッソー総督として任命されましたが、彼が到着したときにはすでに島は放棄された後。バーチは「委任状を開けることなく」帰国しました。

その後の苦難

1706年には再び襲撃が行われ、ニュープロビデンス島に残ったのは、間に合わせの家に住むわずか27世帯のみとなりました。500人に満たない住民たちはその後も襲撃に悩まされ、貿易も衰退。本国からの支援も途絶え、苦しい生活を強いられました。バーチは住民が「裸を遮蔽する服」もないのを見ると、委任状も開けずに去ったと記録されています。

1686年にバハマに到着し、植民地政府に職を得ていたジョン・グレイブズは、1706年にニュープロビデンス島の残り少ない生存者たちが「小さな家に住み、襲撃されたら森で身を守る」と記述しています。

まとめ

ナッソー襲撃は、ニュープロビデンス島とその住民にとって、忘れられない悲劇となりました。襲撃は島のインフラを破壊し、経済を麻痺させ、住民の生活を大きく狂わせました。そして、本国からの支援の欠如は、島の復興をさらに困難なものにしたのです。

この出来事は、植民地時代のカリブ海における紛争の激しさと、その影響の深刻さを物語る一例として、歴史に刻まれています。

もう一度検索