ナラーンタカ

ナラーンタカの伝説

ナラーンタカ（梵: नरान्तक, Narāntaka）は、インド神話に登場する驚異的な存在であるラークシャサの一人です。彼はラークシャサの王ラーヴァナと彼の第二の妻ダニヤマーリニーとの間に生まれた息子であり、アティカーヤ、デーヴァーンタカ、トリシラスと兄弟です。さらに、異母兄弟にはインドラジットやアクシャがいます。特に彼の運命的な戦いは、アヨーディヤーの王子ラーマであり、神々や人間との壮絶な戦争に巻き込まれます。

戦の始まり

物語の発端は、ナラーンタカの叔父であるクムバカルナがラーマの手によって討たれたという衝撃的な知らせです。この出来事はラーヴァナの意気をそぎ、ナラーンタカとデーヴァーンタカをも深く悲しませました。彼らの心は次第に暗雲に覆われましたが、兄弟トリシラスの励ましの言葉によって、再び戦う意志を取り戻します。ナラーンタカは黄金の馬に乗り、戦場に登場します。

戦場での勇士

激しい戦いが繰り広げられると、ナラーンタカは槍を振るい、瞬く間に多くのヴァナラ族の戦士たちを葬ります。その非凡な戦いぶりは、敵軍を恐れ慄かせ、多くの兵士が立ち竦むほどです。しかし、ヴァナラ軍の中には負傷から回復した兵士たちが集まり始め、彼らのリーダーであるスグリーヴァは、自軍の英雄アンガダにナラーンタカとの対峙を命じました。

アンガダとの壮絶な戦闘

アンガダは果敢にナラーンタカと対峙し、「その槍で俺の胸を突いてみろ」と挑発します。それに激怒したナラーンタカは、自らの槍を投げつけますが、驚くべきことに、アンガダの胸に当たった瞬間、槍が砕け散ります。ナラーンタカは逆にアンガダを攻撃し、彼を悶絶させる一撃を与えました。しかし、すぐに起き上がったアンガダが反撃し、ナラーンタカの胸を鋭く打ち抜くと、彼は肋骨が折れたように倒れ、そのまま二度と立ち上がることはありませんでした。

この壮絶な戦いは、ナラーンタカの命を奪っただけでなく、その名が歴史に残ることとなります。彼の勇士としての資質や、兄弟との絆は、神話の中で今なお語り継がれています。彼の戦いは、力の象徴とも言える存在であり、ラークシャサたちの中でも特異な地位を占めるでしょう。

参考文献

• - 『ラーマーヤナ 世界文学全集III-2』阿部知二訳、講談社、1966年。

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