ニコライ・ヴァヴィロフ

ニコライ・イヴァノヴィッチ・ヴァヴィロフについて

ニコライ・イヴァノヴィッチ・ヴァヴィロフ（1887年11月25日 - 1943年1月26日）は、ロシア帝国及びソビエト連邦の著名な植物学者および遺伝学者です。彼は特に農作物の起原に関する研究で広く知られています。そのキャリアの最晩年には、ソビエト連邦における政治の激変により悲劇的な運命を辿りました。

生い立ちと教育

ヴァヴィロフはモスクワで商家の家庭に生まれ、弟は物理学者のセルゲイ・ヴァヴィロフでした。1911年にモスクワ農業大学を卒業し、以後植物の病理学や応用植物学に従事しました。1913年から1914年にかけてイギリスへ留学し、名高い遺伝学者ウィリアム・ベイトソンの指導の下、植物の病害抵抗性に関する研究を行いました。

1917年にはサラトフ大学農学部の教授に就任し、そこで小麦のさび病に対する抵抗性の研究を行いました。1920年には「平行変異説」という概念を提唱し、その後も多くの業績を残しました。1921年にはペトログラードの応用植物学研究所の所長に就任し、1926年にはレーニン賞を受賞しました。この時期、彼はソビエト連邦内での作物の改良研究を先導しました。

研究業績と冒険

ヴァヴィロフは食糧安全保障の確立のために多様な遺伝資源の確保が重要であると認識し、世界各地への大規模な植物学探検を行いました。これにより、各作物がその起源となる地域を持っていることを示す理論を発展させました。彼はまた、当時世界最大の植物種子コレクションを創設し、その成果を著作『栽培植物発祥地の研究』にまとめました。

しかし、1930年代には、メンデルの遺伝に対抗するトロフィム・ルイセンコが勢力を拡大し、ヴァヴィロフの学説は彼の政治的な陰謀に直面しました。1940年には「ブルジョア的エセ科学者」として解職され、逮捕されました。彼は1943年にサラトフの監獄で栄養失調により亡くなりました。

ヴァヴィロフの影響

ヴァヴィロフが収集した種子コレクションは、第二次世界大戦中にさまざまな陰謀にさらされました。特に、ドイツ軍が占領した地域での研究施設にあったサンプルの多くが奪われましたが、レニングラードに保存されていた標本は包囲戦にも耐え、その重要性を保ち続けました。中には、自らの餓死を選んで標本を守った研究者たちの話も伝えられています。

スターリンの死後、1955年にはヴァヴィロフの名誉が回復され、1965年にはヴァヴィロフ賞、1968年にはヴァヴィロフメダルが創設されました。

日本訪問

ヴァヴィロフは1929年に日本を訪れ、北海道から台湾、朝鮮まで幅広く交流を持ちました。札幌では北海道帝国大学の教授との会談を行い、稲の品種の種子を求めましたが、明峯教授はこれを断りました。また、京都では木原均教授と会い、テーマ「栽培植物の起源」に関する講演を行いました。九州では、盛永俊太郎教授との会談もあり、稲の研究の責任を託すると述べたという逸話があります。

まとめ

ニコライ・ヴァヴィロフは、植物科学の基礎を築いた偉大な学者でありながら、政治的な陰謀や厳しい運命に翻弄された生涯を送りました。彼の業績は今なお多くの学者に影響を与え続けています。

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