ニコラエ・チャウシェスクの裁判と処刑

ニコラエ・チャウシェスクとエレナ・チャウシェスクの裁判と処刑

1989年12月、ルーマニアで発生した革命は、ニコラエ・チャウシェスクとその妻エレナの処刑という衝撃的な結末を迎えました。この項目では、革命に至る経緯、チャウシェスク夫妻の逮捕、裁判、そして処刑までの一連の流れを詳細に解説します。

革命の背景

1989年12月15日、ルーマニアのティミショアラで、ハンガリー人牧師の立ち退き命令に抗議する人々が集まりました。この抗議運動は次第に拡大し、チャウシェスク政権に対する不満が噴出するきっかけとなりました。チャウシェスクは、抗議者たちを「ごろつきの集団」と非難し、外国の陰謀であると主張しましたが、人々の怒りは収まりませんでした。

ティミショアラでの抗議運動

1989年3月: カナダ人ジャーナリストがハンガリー人牧師トゥーケーシュ・ラースローを取材。この映像がハンガリーのテレビで放送され、ルーマニア政府の弾圧を国際社会に知らしめることとなりました。
1989年10月: トゥーケーシュの立ち退き命令を巡り、裁判所が立ち退きを命じるも、トゥーケーシュはこれを拒否。信徒たちは彼を支持し、抗議運動が始まりました。
1989年12月15日: トゥーケーシュの自宅前で抗議者と治安部隊が衝突。抗議は拡大し、ルーマニア人も加わり、反共産主義の標語を唱え始めました。
12月17日: チャウシェスクは軍に抗議者への発砲を命じ、多数の死傷者が出ました。この弾圧は、国民の怒りをさらに増幅させました。
12月20日: ティミショアラでは、数万人が集まり、チャウシェスク政権の打倒を訴えました。チャウシェスクは非常事態宣言を発令しましたが、もはや事態を収拾することはできませんでした。

ブクレシュティでの抗議運動

1989年12月21日: チャウシェスクはブクレシュティで集会を開き、演説を行おうとしましたが、群衆からのブーイングと騒ぎによって中断されました。チャウシェスクは、騒ぎを鎮めようとしましたが、状況は悪化するばかりでした。
12月22日: 反チャウシェスクの機運は高まり、労働者や抗議者がルーマニア共産党中央委員会の建物に集結。チャウシェスク夫妻はヘリコプターで逃亡を図りましたが、その日のうちに逮捕されました。

チャウシェスク夫妻の逮捕と裁判

チャウシェスク夫妻は、トゥルゴヴィシュテで逮捕された後、救国戦線評議会によって裁判にかけられることになりました。裁判は12月25日に開始されました。

裁判の概要

起訴内容: 国家に対する犯罪、自国民の大量虐殺、外国の銀行への不正蓄財、国民経済の弱体化など。
裁判の形式: 略式裁判であり、被告人に弁護士を選ぶ権利や精神鑑定を受ける権利は与えられませんでした。
判決: 死刑と全財産没収。

チャウシェスクは、裁判を「クーデター」と非難し、自身を「ルーマニアの大統領」と主張しましたが、裁判は一方的に進められました。弁護人たちは、裁判の直前に内容を知らされ、十分な弁護活動を行うことができませんでした。また、検察はチャウシェスク夫妻に対し、「精神疾患」を認めることを条件に責任を問わないという妥協案を提示しましたが、夫妻はこれを拒否しました。

処刑

裁判からわずか10分後、チャウシェスク夫妻は銃殺刑に処されました。この処刑の模様はテレビで放送され、世界中に衝撃を与えました。

処刑の様子

チャウシェスクは死刑執行直前、共産革命歌「インターナショナル」を口ずさみ、「裏切り者を殺せ！」と叫びました。
エレナは、夫とともに死ぬことを望み、自分たちの拘束を解くよう要求しました。また、「自分は母親であり続けた」と叫びましたが、その訴えは聞き入れられませんでした。

処刑後の影響

チャウシェスク夫妻の処刑は、国際社会から批判を浴びました。裁判の不公正さや処刑の迅速さについて、多くの人々が疑問を呈しました。また、ルーマニア国内では、チャウシェスク政権に対する郷愁の念を抱く人々も存在します。

処刑に対する批判

裁判の不当性: 弁護権の侵害、精神鑑定の欠如など、法的手続きが著しく欠如していました。
処刑の迅速性: 裁判後すぐに処刑が行われたことは、人道的観点から問題視されました。

ルーマニア社会における評価

チャウシェスク政権への懐古: 経済状況の悪化などから、チャウシェスク時代を懐かしむ声も存在します。
チャウシェスクの評価: 調査によって結果は異なりますが、肯定的に評価する意見も一定数存在します。

その後

死刑制度の廃止: 1990年、ルーマニアで死刑が廃止されました。
真相究明の動き: 1989年の出来事に関する調査は今もなお継続されています。関連する人物が起訴されるなど、真相解明に向けた動きが続いています。
* チャウシェスクの資産: 裁判で「外国の銀行に秘密口座を開設した」とされましたが、実際にはそのような口座は存在しなかったことが判明しました。

まとめ

ニコラエ・チャウシェスクとエレナ・チャウシェスクの裁判と処刑は、ルーマニア革命における悲劇的な出来事でした。この出来事は、権力者の失脚、民主化への移行、そしてその過程で生じる混乱と不正義について、多くの教訓を私たちに与えています。

この項目では、関連する様々な情報をまとめることで、この歴史的事件に対する理解を深めることを目指しました。この事件の真相については、いまだに多くの議論がなされており、今後も様々な角度からの研究がなされるべきでしょう。

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