ニシコクマルガラス

ニシコクマルガラス（Coloeus monedula）

ニシコクマルガラスは、スズメ目カラス科に属する鳥類の一種で、ユーラシア大陸に広く分布しています。コクマルガラスと近縁であり、以前はカラス属の亜属として分類されていましたが、近年では独立した属として扱われることが一般的です。

形態

全長は約33cmで、カラス科の中では比較的小柄です。羽毛は全体的に黒色または灰色がかった黒色をしており、頬、後頸部、頸部は明るい灰色から銀灰色をしています。虹彩は灰色がかった白色または銀白色で、くちばしと足は黒色をしています。

分布

ニシコクマルガラスは、北アフリカからヨーロッパのほぼ全域、イラン、北西インド、シベリアにかけて広範囲に分布しています。生息環境は多様で、ステップ、疎林、耕作地、牧草地、海食崖、都市部など、様々な場所で見られます。日本では、北海道で2例の記録があるのみの迷鳥です。

亜種

ニシコクマルガラスは、以下の4亜種に分類されています。

C. m. monedula (基亜種): スカンジナビアからイングランド、フランスにかけて分布。
C. m. soemmerringii: 東ヨーロッパ、北・中央アジアからイラン、インド北西部にかけて分布。
C. m. spermologus: イギリス諸島、西・中央ヨーロッパからカナリア諸島、コルシカ島にかけて分布。
C. m. cirtensis: 北アフリカ（モロッコ、アルジェリア）に分布。

生態

採餌

ニシコクマルガラスは、主に地面に落ちているものを拾って食べますが、樹木から食物を得ることもあります。昆虫などの節足動物、草の種子や穀物、人間の残飯、海辺に打ち上げられた魚などを食べます。また、他のカラスと比べて、餌台の餌を好んで食べる傾向があります。

営巣

ニシコクマルガラスは、樹洞や断崖、廃屋、煙突、針葉樹林など、様々な場所に巣を作ります。集団で営巣することが多く、4月から5月にかけて産卵します。一度に産む卵の数は通常4〜5個で、卵の大きさは約3.6cm × 2.6cm、つやのある淡青色の地に黒褐色の斑があります。メスが抱卵し、17〜18日で孵化します。雛は雌雄共同で育てられ、28〜32日で羽毛が生え揃います。

鳴き声

ニシコクマルガラスは、「チャック・チャック」または「カック・カック」と鳴きます。英名の "jackdaw" は、この鳴き声に由来すると言われています。

習性

ニシコクマルガラスは、非常に社交的な鳥で、つがいまたは大きな群れで行動します。群れの中では、つがいは常に行動を共にします。コンラート・ローレンツは、ニシコクマルガラスの群れに見られる複雑な社会性を研究し、その観察結果を『ソロモンの指輪』に記しました。ローレンツの研究によれば、ニシコクマルガラスの社会は階層構造を持ち、高位の個体が下位の個体を支配しています。また、つがいの結びつきは非常に強く、特に、つがいの双方が階層の同じ位置にいる場合や、低位のメスが高位のオスとつがいになった場合に、そのメスの立場が引き上げられることが指摘されています。

ニシコクマルガラスは、食料を分け合う習性も持っています。霊長類ではあまり見られないこの行動は、鳥類ではつがいの愛情表現や求愛行動としてよく見られます。ニシコクマルガラスは、チンパンジーよりも積極的に食料を仲間に分け与えることが観察されており、その目的は互いに助け合うため、あるいは対立を避けるためであると考えられていますが、まだ完全には解明されていません。

人間との関係

小説家フランツ・カフカの苗字「カフカ」は、チェコ語でニシコクマルガラスを意味します。ウクライナ語ではハールカと呼ばれ、13世紀初頭のガリツィアの紋章に採用されています。

参考文献

BirdLife International (2004). "Corvus monedula". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2006. International Union for Conservation of Nature.

関連項目

コクマルガラス

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