ニジェール軍事クーデター (2010年)

2010年ニジェール軍事クーデターの詳細解説

2010年2月18日、ニジェールの首都ニアメで軍事クーデターが発生し、当時のタンジャ・ママドゥ大統領が失脚しました。このクーデターは、ママドゥ大統領の長期政権と、それに伴う独裁的な政治手法に対する国民の不満が背景にありました。

クーデターの背景

ママドゥ大統領の政治的経歴

タンジャ・ママドゥ大統領は、ニジェールにおいて比較的長期にわたり政権を維持した政治家でした。彼は元々軍の幹部であり、1974年の軍事クーデターを機に政界入りしました。その後、高位の官職を歴任し、1999年の大統領選挙で当選して以降、政権を維持していました。

クーデターの原因：大統領の独裁化

クーデターの主な原因は、ママドゥ大統領が2009年頃から強めていった独裁的な政治姿勢にあります。大統領は憲法で禁じられた3選を可能にするため、憲法改正を強行しました。この動きに対し、議会や憲法裁判所が反発しましたが、大統領は議会を解散し、裁判所の判事を交代させるなど、強引な手法で自身の意向を通そうとしました。この強権的な姿勢は国内外から強い非難を浴び、国内の野党勢力や欧米諸国からの批判が高まりました。

クーデターの概要

大統領宮殿の襲撃と大統領の拘束

2010年2月18日、反乱軍兵士が大統領宮殿を襲撃し、大統領警護隊との間で銃撃戦が発生しました。その後、反乱軍は大統領宮殿を制圧し、閣議中だったママドゥ大統領と閣僚を拘束しました。これにより、ママドゥ政権は崩壊しました。

ニアメ市内の状況

クーデター発生後、ニアメ市内では市民が避難し、一時的に人通りが途絶えました。しかし、大きな混乱はなく、兵士が市内各地を警戒する中で比較的落ち着いた状況が保たれました。

軍事政権の成立と声明発表

クーデター後、軍事政権「民主主義復興最高評議会」（CSRD）が成立し、国営テレビを通じて声明を発表しました。CSRDは憲法の停止、議会などの政府機関の解散、国境の閉鎖、夜間外出禁止令の発令などを発表しました。また、軍事政権のトップにはサル・ジボ大佐が就任しました。

クーデター後のニジェール

市民生活の状況

クーデター後、ニアメ市内では武力衝突の収束に対する安堵と、変革への期待感が広がりました。市民は軍事政権への支持を示し、民主主義の再建を望みました。

野党勢力の動き

ママドゥ政権に反対していた野党勢力は、クーデターを歓迎し、民主主義再建に向けた活動を活発化させました。野党勢力は軍事政権に対し、新憲法の制定と自由公正な選挙の実施について協議を呼びかけました。

ママドゥ政権幹部などの消息

拘束されたママドゥ前大統領は、軍の施設で保護されていることが発表されました。また、閣僚の多くは釈放されましたが、一部は引き続き拘束下に置かれました。

民政復帰への準備

軍事政権は、国連、アフリカ連合（AU）、西アフリカ諸国経済共同体（ECOWAS）との協議を行い、民政復帰に向けたプロセスを開始しました。軍事政権は、野党勢力などとの対話を通じて、民政復帰への具体的なスケジュールを決定する方針を示しました。

半大統領制の維持と民政移管

軍事政権は、半大統領制を維持する憲法案を改めて採択し、国民投票で可決されました。その後、2011年3月には大統領選挙が行われ、マハマドゥ・イスフが当選し、4月7日に就任宣誓を行い、民政移管が果たされました。

諸外国からの反応

今回のクーデターに対し、国連や欧米諸国、アフリカ諸国などから様々な反応が寄せられました。全体的には、クーデターを非難する声明が多く発表されました。

国際機関からの反応

国連は、クーデターのような非合法的な手段による政権交代と、ママドゥ前大統領の強権的な姿勢の双方を非難しました。アフリカ連合（AU）はニジェールの加盟資格を停止し、軍事政権に対し、早期に憲法秩序を回復し、民政に復帰するよう求めました。欧州連合（EU）もクーデターを非難する声明を発表しました。

各国の反応

アメリカは、クーデターの原因を作った責任はママドゥ自身にあるとし、速やかな民主主義政府への復帰を求めました。フランスは、クーデターを非難し、軍事政権に対し、数ヶ月以内に選挙を実施するように求めました。セネガルやリビアも特使を派遣し、事態の収拾に動きました。

このように、2010年のニジェール軍事クーデターは、国内の政治的な混乱と国際的な関心を集める出来事となりました。このクーデターを契機に、ニジェールは民主的な政治体制への移行を目指し、新たな一歩を踏み出すこととなりました。

もう一度検索