ニタ・ナルディ

ニタ・ナルディ：サイレント映画時代の妖艶なヴァンプ女優

ニタ・ナルディ (1894年11月13日-1961年2月17日) は、アメリカ合衆国のサイレント映画を代表する女優の一人です。

彼女は、ニューヨーク市でアイルランド系とイタリア系の両親のもとにメアリー・ノナ・ドゥーリーとして生まれました。
華やかな舞台の世界に憧れを抱き、ジーグフェルド・フォリーズでキャリアをスタートさせます。そこで、よりエキゾチックな響きの芸名「ニタ・ナルディ」へと変えました。これは幼馴染の姓に由来すると言われています。

転機が訪れたのは1919年。
かの有名なジョン・バリモアがニタの独特の美しさに注目し、パラマウント映画と契約するきっかけを掴みます。
バリモアからの推薦によって、1920年の『狂える悪魔 (Dr. Jekyll and Mr. Hyde)』で映画デビューを果たしました。
この作品で、彼女は男性を翻弄し堕落させる魅力的なヴァンプ役を演じ、たちまち人気を博します。
当時、同じくヴァンプ女優として活躍していたセダ・バラと人気を競い合うことになります。

ニタ・ナルディのキャリアにおける最も重要な作品は、1922年にルドルフ・ヴァレンティノと共演した『血と砂 (Blood and Sand)』です。
この作品は大ヒットを記録し、ニタ・ナルディの名声を不動のものとしました。
その後もヴァレンティノとは3作品で共演するなど、黄金期のハリウッドを代表するスターの一人として活躍します。

しかし、トーキー映画の台頭と世界恐慌の影響を受け、ヴァンプ女優という役柄は時代遅れとなり始めます。
1929年、ニタ・ナルディは俳優のシール・バックレイと結婚し、事実上引退しました。
その後は、小規模な作品や舞台に時折出演する程度となりました。

1961年、心臓発作により66歳でこの世を去りました。

ニタ・ナルディの代表作には、以下の作品があります。

『狂える悪魔』(Dr. Jekyll and Mr. Hyde, 1920年)
『経験』(Experience, 1921年)
『血と砂』(Blood and Sand, 1922年)
『十戒』(The Ten Commandments, 1923年)
『月の囁き』(The Glimpses of the Moon, 1923年)
『情熱の悪鬼』(A Sainted Devil, 1924年)
『毒蛇』(Cobra, 1925年)
『山鷲』(The Mountain Eagle, 1926年) ※アルフレッド・ヒッチコック監督作品。フィルムは現存していません。

ニタ・ナルディは、サイレント映画時代を象徴する女優の一人であり、彼女の妖艶な魅力は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。
短いながらも華々しいキャリアは、ハリウッド黄金期の栄光と影を物語る、貴重な存在と言えるでしょう。

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