ニック・ポッター

1951年 10月18日にウィルトシャーで生まれ、2013年 1月16日に逝去したニック・ポッターは、イギリスを代表するベーシスト、作曲家、そして画家でした。特に1970年代におけるプログレッシブ・ロック・バンド、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター（Van der Graaf Generator）での活動を通じて、その名を広く知られることとなります。著名な映画監督であるサリー・ポッターは彼の姉にあたります。

ポッターは15歳で学校を離れ、音楽の道へと進みました。16歳の頃、彼は後にヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターで行動を共にするドラマーのガイ・エヴァンスと同じ時期に、サイケデリック・バンド、The Misunderstoodの後期メンバーとして音楽キャリアをスタートさせますが、バンドはまもなく活動を休止します。

ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターは、アルバム『エアゾール・グレイ・マシーン』リリース後にバンドの再編成を決定しました。当時のベーシストだったキース・エリスがジューシー・ルーシーへ移籍することになり、ガイ・エヴァンスの推薦によって、ポッターがその後任としてバンドに迎えられました。

彼はバンド加入後初のアルバムとなる『ザ・リースト・ウィ・キャン・ドゥ・イズ・ウェイヴ・トゥ・イーチ・アザー』（1970年）でその才能を発揮します。ここでは主にベースを担当しましたが、一部の楽曲ではエレクトリック・ギターも演奏しています。続くアルバム『天地創造』（1970年）のレコーディング中、彼は3曲の録音を終えたところでヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターを脱退します。アルバムに残されたベースパートは、オルガニストのヒュー・バントンがベースペダルを用いて完成させました。

バンドを離れた後も、ポッターは中心人物であるピーター・ハミルと良好な関係を維持し続けました。1971年にはハミルの初のソロ・アルバム『フールズ・メイト』に参加したのを皮切りに、コリン・スコットやマグナカルタといったアーティストのレコーディングでもベースを演奏します。1970年代を通じて、彼はジェフ・ベック、チャック・ベリー、レア・バード、スティーヴ・スウィンデルズなど、ジャンルを超えた多彩なミュージシャンたちとのセッションワークに精力的に取り組みました。1973年にはロング・ハロー・プロジェクトにも参加し、その貢献はピーター・ハミルのアルバム『オーヴァー』（1977年）でも再び確認できます。

1977年、ヒュー・バントンとデヴィッド・ジャクソンがヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターを脱退すると、ポッターはバンドへの再加入を求められました。彼は再結成後のアルバム『ザ・クワイエット・ゾーン／ザ・プレジャー・ドーム』（1977年）と、その後のライブを収録した2枚組アルバム『ヴァイタル』（1978年）に参加しています。しかし、以前と同様にバンド特有の緊迫した雰囲気に馴染めず、「時折、暗雲が立ち込めるような、とても不吉な感覚があった」と後に語っています。特にフランスのアヌシーでの公演では強い不安を感じ、ステージ上で誰かがバンドの音楽に対して悪魔払いを行っていると主張する聴衆が現れた際には、大きく動揺して楽屋へ戻らざるを得なくなる出来事もありました。

1980年代から1990年代初頭にかけても、ポッターはピーター・ハミルとの共同作業を継続し、特に「Kグループ」のベーシストとして1981年から1985年まで活動しました。また、The Tigersやダンカン・ブラウンといったアーティストともレコーディングやツアーを行っています。1983年には自身のソロ・キャリアを開始し、主にエレクトロニック・ミュージックを含む多数のアルバムを発表しました。1995年には、ダンカン・ブラウンの没後リリースされたアルバム『Songs of Love and War』でベース演奏とプロデュースを手がけています。2008年には、デヴィッド・ジャクソンら多くのゲストを迎えたライブ・アルバム『Live in Italy』をリリースしました。

ポッターのソロ・アルバムはすべて、2009年にリマスターされ再発売されました。

晩年、ポッターは最後の2年間をピック病と闘いました。2013年1月、肺炎を患いユニバーシティ・カレッジ病院に入院。同年1月16日夜、帰らぬ人となりました。

ディスコグラフィ（一部）

ソロ・アルバム

Mountain Music (1983)
Sketches in Sound (1986)
Self Contained (1987)
The Blue Zone (1990)
New Europe-Rainbow Colours (1992)
Dreamworld (1997)
Live in Italy (2008) ※with デヴィッド・ジャクソン他

ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター

The Least We Can Do Is Wave To Each Other (1970)
H To He Who Am The Only One (1970)
The Quiet Zone / The Pleasure Dome (1977)
Vital / Van Der Graaf Live (1978)

主な参加アルバム

ピーター・ハミル: Fool's Mate (1971), Over (1977) 他多数
レア・バード: Epic Forest (1972)
チャック・ベリー: The London Chuck Berry Sessions (1972)
コリン・スコット: Colin Scot (1971)
マグナカルタ: Songs from Wasties Orchard (1971)
ロング・ハロー: The Long Hello Volume Two (1981)
ダンカン・ブラウン: Travelling Man (1984), Songs of Love and War (1995)
* The Tigers: Savage Music (1980)

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