ニテンピラム

ニテンピラムとは

ニテンピラムは、ネオニコチノイド系に分類される殺虫剤の一種です。この化合物は、中枢神経系の伝達を阻害することにより、昆虫や寄生虫に対して殺虫効果を発揮します。その特性から、農業分野では農薬として、また動物医療分野では動物用医薬品として広く利用されています。

農薬としての利用

ニテンピラムは、農薬として、主にイネのウンカや野菜のアブラムシといった害虫の駆除に用いられます。日本では、武田薬品工業によって開発され、1995年に農薬登録を受けました。市販されている商品としては、「ベストガード」や、複合剤である「ウォンテッド」などが挙げられます。これらの農薬は、農作物を害虫から守り、安定した収穫を支えるために重要な役割を果たしています。

動物用医薬品としての利用

ニテンピラムは、犬や猫のノミ駆除薬としても利用されています。経口投与によって、ノミの成虫だけでなく、卵や幼虫も効果的に駆除できます。投与後約30分で効果が現れ始め、4時間以内にはほぼ全てのノミを死滅させることができます。ただし、効果の持続時間は24～48時間と短いため、長期的な予防よりも、ノミが大量発生した際の迅速な駆除に適しています。かつて日本で販売されていた「プログラムA錠」は、ニテンピラムを主成分としたノミ駆除薬でしたが、現在は販売されていません。

安全性について

ニテンピラムの安全性に関するデータも公表されています。ラットに対する経口投与での半数致死量（LD50）は、雄で1,680mg/kg、雌で1,575mg/kgとされています。また、経皮投与でのLD50は2,000mg/kg以上とされています。これらの数値は、比較的安全性が高いことを示唆しています。

さらに、人の健康への影響を考慮して、一日摂取許容量（ADI）は0.53mg/kg/dayと定められています。また、食品中の残留基準も設定されており、茶では10ppm、その他の15種類の作物では0.2ppm～10ppm以下の残留基準が設けられています。

まとめ

ニテンピラムは、農薬と動物用医薬品の両分野で利用される殺虫剤です。その迅速な効果と比較的高い安全性から、害虫や寄生虫の駆除に広く利用されています。ただし、効果の持続時間が短いため、状況に応じた適切な使用が求められます。

参考文献

* 植村振作・河村宏・辻万千子・冨田重行・前田静夫著『農薬毒性の事典 改訂版』三省堂、2002年。ISBN 978-4385356044。

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