ニトロエタン

ニトロエタン：性質、用途、危険性

ニトロエタンは、化学式C₂H₅NO₂で表される有機化合物です。常温常圧下では、無色でわずかに甘い果実のような香りのする油状の液体として存在します。

生成方法

工業的には、プロパンと硝酸を高温（350～450℃）で反応させることで製造されます。この反応は、ニトロアルカン類の中でも主要な合成法の一つであり、ニトロエタン以外にも1-ニトロプロパンや2-ニトロプロパンなどが生成します。反応機構は複雑ですが、フリーラジカル反応を介して生成することが知られています。

用途

ニトロエタンは、その化学的性質から様々な用途に用いられています。最も重要な用途の一つは、ヘンリー反応における原料です。ヘンリー反応は、ニトロアルカンとアルデヒドを反応させてβ-ニトロアルコールを生成する反応で、医薬品やその他の有用な化合物の合成に広く利用されています。

具体的には、降圧剤として用いられるメチルドーパの前駆体となる3,4-ジメトキシベンズアルデヒドの合成や、アンフェタミンの合成中間体となるベンズアルデヒド誘導体の合成などにも用いられます。さらに、ホルムアルデヒドとの縮合反応や水素化反応によって、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールなどのアミン類を合成することも可能です。また、オレイン酸との反応によってオキサゾリン類を生成し、プロトン化することで陽イオン系界面活性剤としても利用できます。

その他、燃料添加剤や爆薬の原料としても使用されるなど、多様な用途を持ちます。

危険性

ニトロエタンは引火性と爆発性を有する危険な物質です。日本の消防法では、第5類危険物（自己反応性物質）に分類されており、取り扱いには細心の注意が必要です。特に、引火点（28℃）以上の温度では空気と混合して爆発性の混合気を形成するため、適切な換気と温度管理が不可欠です。

また、塩基、酸、アミン、重金属などの物質と混合すると、衝撃に対して非常に敏感となり、爆発の危険性が増大します。ラットへの経口投与試験では、半数致死量（LD50）が1625mg/kgと報告されており、人体への有害性も無視できません。摂取した場合、血液障害、麻酔作用、呼吸器への刺激、催涙作用などを引き起こす可能性があります。ただし、皮膚刺激性や発癌性については、現時点では確認されていません。

ニトロエタンを取り扱う際には、適切な安全対策を講じ、関係法規を遵守することが重要です。

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