ニトロソニウムイオン

ニトロソニウムイオン (NO+)

ニトロソニウムイオン（英: nitrosonium ion）は、化学式NO+で示されるオキシカチオンです。このイオンは、ニトロシルカチオンとも呼ばれ、窒素原子と酸素原子が三重結合で結びついており、全体として正の電荷を帯びた特性を持っています。興味深いことに、NO+は一酸化炭素（CO）や窒素（N2）と等電子的であるため、化学的性質も似通っています。

存在形態

NO+は、NOClO4やNOSO4H（正確にはONOSO2OH）、NOBF4などの塩として見られます。特に、ClO4-やBF4-といったイオンとの塩は、アセトニトリルにわずかに溶解します。流通しているNOBF4は、昇華によって200-250°C、0.01 mmHg（1.3 Pa）で純粋化できます。

酸性環境下では、NO+は亜硝酸と平衡にあり、通常亜硝酸塩や亜硝酸エステルがNO+の生成に必須です。以下はその反応式です：

HONO + H+ → NO+ + H2O

化学的性質

加水分解

NO+は水と速やかに反応し、亜硝酸を生成します。この反応により、NOBF4は水分や湿気から保護する必要があります。

例えば、次のような反応が考えられます：

NOBF4 + H2O → HONO + HBF4

また、塩基と反応すると、亜硝酸塩が生成されます。

NOBF4 + 2 NaOH → NaNO2 + NaBF4 + H2O

ジアゾ化剤

NO+はアリールアミンと反応することでジアゾニウムイオンを生成します。このとき生じるジアゾニオ基は求核剤によって容易に脱離反応を起こすようになります。

酸化剤

NO+は強力な酸化剤であり、特にNOBF4は注目されています。ジクロロメタン及びアセトニトリル中でのNO+の酸化還元電位は、いずれも高い値を示します。これにより、NOBF4は有用な酸化剤として広く利用されています。特に、NOは窒素ガス流で簡単に除去できますが、空気中でNO2に変わることで注意が必要です。

アレーンのニトロシル化

電子寄与の大きいアレーンは、NOBF4によりニトロシル化され、特定の化合物を生成します。例として、アニソールのニトロシル化が挙げられます。反応式は次の通りです：

CH3OC6H5 + NOBF4 → CH3OC6H4-4-NO + HBF4

ただし、ニトロソニウムイオンNO+はニトロニウムイオンNO2+と混同されることがあります。これらは異なる化学種であり、特にパワーに違いがあります。

NO錯体の原料

NOBF4は、いくつかの金属カルボニル等と反応し、金属ニトロシルを生成します。この場合、空気による酸化に注意する必要があります。

例：
(C6Et6)Cr(CO)3 + NOBF4 → [(C6Et6)Cr(CO)2(NO)]BF4 + CO

まとめ

ニトロソニウムイオンは、化学の多くの分野で重要な役割を果たし、その特性や反応は今なお研究されています。特に、その酸化能力や反応性は、多様な化学反応に活用されており、理解を深めることで新たな応用の可能性を広げています。

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