ニプコー円板

ニプコー円板とは

ニプコー円板は、パウル・ニプコウによって発明された機械式の画像走査装置です。これは、1920年代に登場した初期の機械式テレビの重要な構成要素でした。円板を回転させることで画像を走査するというシンプルな原理で動作します。

物理的構造

ニプコー円板は、金属、プラスチック、厚紙などの素材で作られた円盤です。この円盤には、中心から外側に向かって螺旋状に等間隔で穴が開けられています。穴の配置は、レコード盤の溝のように螺旋状になっており、回転することで各穴は円形の軌跡を描きます。この軌跡の直径は、中心からの距離によって決まり、穴の大きさによってリングの太さが決まります。円板の精度によって、リングが重なり合うかどうかが決まります。

動作原理

レンズを使用して、画像を直接円板に投影します。螺旋状の穴を通ることで、画像は水平方向にスライスされ、センサーによって明るさのパターンとして検出されます。この信号を光に変換し、同期して回転する別のニプコー円板を通して再構成することで、元の画像が再現されます。ニプコー円板を通して物体を見ると、小さな扇形の窓を通して回転する穴の軌跡が見えます。十分な速度で回転させると、物体全体が連続的に見えるようになります。これは、映画撮影の原理と似ており、動きを捉えることも可能です。

ニプコー円板の画像走査における課題は、走査線が直線ではなく曲線を描くことです。現代のテレビは水平方向に走査しますが、ニプコー円板は外縁から渦巻き状に中心に向かって走査します。そのため、円板の直径を大きくし、穴を小さくすることが求められます。しかし、技術の進歩により、画像走査は電子式が主流となりました。

利用と応用

ニプコー円板の利点の一つは、センサーとして単純なフォトレジスタやフォトダイオードが利用できることです。これにより、円板とセンサー、そしてタイミング機構だけで簡単な撮影機器が構成できます。また、受像機と撮像機をほぼ同じ構成で製作できるのも利点です。この場合、光センサーを光源に置き換え、送られてきた信号で光源を駆動します。同期の方法は別途必要ですが、手動から電気信号制御まで様々な方法が考えられます。

スコットランドの発明家ジョン・ロジー・ベアードは、この特性を利用して世界初の機械式テレビを開発しました。1920年代の実験的な画像ラジオ放送でも、ニプコー円板が使用されました。

欠点

ニプコー円板の欠点は、縦方向の解像度が円板上の穴の数に制限されることです。実用化されたものでは30から100程度の穴しかありません。また、映像が非常に小さいという問題もあります。例えば、切手程度の大きさの画像を得るには、直径30cmから50cmの円板が必要でした。初期のテレビでは、直径30〜50cmの円板に30〜50個の穴が開けられていましたが、騒音が大きく、解像度が低く、ちらつきもひどいものでした。撮影側では、対象を強く照らす必要もありました。

応用例

機械式テレビは広く普及しませんでしたが、ニプコー円板は光学顕微鏡の一部である共焦点顕微鏡や、高速写真撮影に応用されています。小型化・高速化によって、新たな可能性が開かれています。

まとめ

ニプコー円板は、そのシンプルな構造と動作原理から、初期のテレビジョン技術において重要な役割を果たしました。しかし、解像度や映像の大きさなどの問題から、現代では電子式の走査方法が主流となっています。それでも、その原理は様々な分野で応用され続けています。

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