ニベ科

ニベ科（Sciaenidae）とは

ニベ科は、スズキ目に分類される魚のグループです。この科には、ニベやシログチといった沿岸性の海水魚を中心に、約270種もの多様な魚が含まれています。ニベ科は、79科を擁するスズキ亜目の中で、ハタ科、テンジクダイ科に次いで3番目に大きな科です。

分布と生息環境

ニベ科の魚は、太平洋、インド洋、大西洋など、世界中の海に分布していますが、その生息域は主に大陸周辺の沿岸域に限られています。インド洋中央部や太平洋の島嶼部には生息していません。多くは沿岸から大陸棚にかけての砂泥底に生息し、中には水深200mを超える深海で見られる種類もいます。また、一部の種は汽水域にも進出し、南北アメリカ大陸の大西洋岸では、28種の純粋な淡水魚が確認されています。

形態と特徴

ニベ科の魚の多くは、体長が数十cm程度にまで成長します。ニベやシログチのように、食用として重要な種類も少なくありません。中には、オオニベのように全長2mにも達する大型種も存在します。

ニベ科の魚は、「イシモチ」あるいは「グチ」と総称されることがあります。これは、耳石が他の科の魚よりも大きいこと、浮き袋を使って音を出すことに由来しています。

体型は、左右に平たい側扁形をしており、一部の種は口に小さなヒゲを持っています。背びれは長く、前方の棘条部（6〜13本）と後方の軟条部（1棘20〜35軟条）の間には深い切れ込みがあります。臀びれは1〜2本の棘条と6〜13本の軟条で構成され、棘条は通常細く、2本目が大きいことが多いです。側線は尾びれの先端まで伸びています。尾びれの形は、中央部がややくぼんだものから丸みを帯びたものまで様々です。口蓋骨と鋤骨には歯がありません。浮き袋には、特徴的な多数の分岐構造が見られます。椎骨数は24〜30個です。

分類

ニベ科は、66属270種で構成されています。分類については、10亜科に細分化する見解もあります。Fishbaseの情報に基づいています。

人間との関わり

ニベ科の魚は、食用として広く利用されています。また、発達した耳石は、工芸品に利用されることもあります。例えば、幕末の尾張藩主・徳川慶勝が所用した石首魚石入蝋色塗刀拵・脇差拵は、刀や脇差の鞘の漆塗りにイシモチ（ニベ科）の耳石を散りばめて、黒地に白の斑模様を表しています。これらの工芸品は、現在、徳川美術館に所蔵されています。

参考資料

Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fourth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2006年 ISBN 0-471-25031-7
岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2
上野輝彌・坂本一男 『新版 魚の分類の図鑑』 東海大学出版会 2005年 ISBN 978-4-486-01700-4
徳川美術館編『徳川慶勝 知られざる写真家大名の生涯』徳川美術館、2013年7月27日

外部リンク

FishBase‐ニベ科 （英語）
スズキ目専門・スズキ目一覧表
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