ニューギニア航空2900便離陸失敗事故

ニューギニア航空2900便離陸失敗事故は、2013年 10月19日にパプアニューギニアのマダン空港で発生しました。マダン空港からタブビル空港へ向かう予定だったニューギニア航空2900便（ATR 42-320F）が、離陸に失敗し滑走路を逸脱した航空事故です。

事故機

事故を起こした機体は、ATR 42-320F（P2-PXY）で、製造番号087として1988年3月に製造されました。当初はフィッシング航空に納入され、その後複数の航空会社でリース運用された後、2001年4月にファーンエア・スイスが購入し貨物機に改修されました。2013年7月からは、ファーンエア・スイスからニューギニア航空へリースされ、機体記号もP2-PXYに変更されています。

乗員

2900便には3名の乗員が搭乗していました。

機長：37歳のスペイン人男性。総飛行時間7,110時間（うち同型機3,433時間）。
副操縦士：33歳のスペイン人男性。総飛行時間3,020時間（うち同型機2,420時間）。
セーフティーパイロット：53歳のオーストラリア人男性。総飛行時間13,214時間。タブビル空港への進入をサポートするため搭乗。

事故当時、機長が操縦を担当し、副操縦士が計器の監視を行っていました。

事故の経緯

マダン空港までの飛行

事故機は当日、ポートモレスビーからマダン空港までPX2100便として運航されました。滑走路走行中、アンチスキッドシステムの警告灯が点灯したため、パイロットは機体を停止させ点検を実施。アンチスキッドが作動しない状態でもマダン空港への着陸が可能であると判断し、現地時間6時16分に離陸、7時32分にマダン空港へ着陸しました。機体には、マダン空港で降ろされる860kgの貨物が積載されていました。

事故発生

マダン空港でポートモレスビーからの貨物を降ろし、タブビルとポートモレスビーで降ろす予定の貨物を積載後、9時15分に滑走路25へ向けて移動を開始しました。2900便は離陸滑走を開始し、離陸速度である102ノット (189 km/h) まで加速しましたが、パイロットが操縦桿を引いても機体は浮上しませんでした。離陸を中止し、逆推力装置とブレーキを作動させましたが、滑走路内で停止できず、右翼が外周フェンスに衝突。機体は45度の角度で草の生い茂る池に突っ込みました。衝撃により右翼側から火災が発生し、パイロットは頭上の非常脱出口から脱出しました。

事故調査

事故発生後、パプアニューギニア航空事故調査委員会が調査を開始しました。その結果、事故機が過積載状態であったことが判明しました。ATR 42Fの貨物区画はAからFまでの6つの区画に分かれています。事故当日の積載表では、A区画に350kg、BからD区画に各800kg、E区画に600kg、F区画に360kgのタバコを積む予定でした。積載表を作成した担当者は、実際の重量を測定せずに各カートンを12kgと仮定して計算し、貨物の総重量を3,710kgとしていました。

しかし、実際に積載されたタバコのカートンあたりの重量は、12.14kg、12.44kg、13.16kgと異なっており、機体は想定よりも重くなっていました。調査開始前に貨物の大半が持ち去られたため正確な積載重量は不明ですが、カートンあたりの重量から推定すると、実際の積載重量は4,303kgと計算され、積載表の計算値より593kg多いことが判明しました。さらに、A区画に積載されたタバコの銘柄と数量からA区画の積載重量を再現したところ、1,136kgとなり、積載表の記載値である350kgを大幅に上回っていました。A区画の最大許容重量である1,000kgも超過していました。

これらの要因により、機体の総重量は最大離陸重量である16,900kgを343kg上回る17,243kgとなり、重心位置も安全範囲を超えていたことが明らかになりました。

事故原因

事故調査委員会は、ニューギニア航空のATR42/72型機に対する積載手順と管理体制が不適切であったこと、および正確な貨物重量がパイロットに伝達されなかったことが事故の主な原因であると結論付けました。

また、マダン空港の消防設備がATR42型機以上の規模の火災に対応できるものではなかったこと、滑走路端の安全区域がICAO（国際民間航空機関）の基準を満たしていなかったことも、事故の要因として指摘されました。

関連項目

ファイン航空101便墜落事故
* エア・ミッドウエスト5481便墜落事故

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