ニューマドリッド地震

1811年 12月16日に始まった一連のニューマドリッド地震は、アメリカ合衆国中東部を襲った歴史的な大地震です。この地震は、ニューマドリッド地震帯に位置するミズーリ州のニューマドリッドという町から名付けられました。

地震の概要

この地震は、広範囲にわたる揺れを引き起こし、その影響は遠く離れた地域にも及びました。以下は、地震の主な特徴です。

広範囲な揺れ: 約13万平方キロメートル以上で強い揺れが、300万平方キロメートル近くで中程度の揺れが観測されました。1906年のサンフランシスコ地震と比較すると、その規模の大きさが際立ちます。
一連の地震: 1811年 12月16日から1812年 2月7日にかけて、マグニチュード7以上の地震が4回発生しました。
1811年 12月16日：アーカンソー州北東部を震源とするマグニチュード7.2から8.1の地震が2回発生。
1812年 1月23日：ミズーリ州ブートヒール地域を震源とするマグニチュード7.0から7.8の地震が発生。
1812年 2月7日：ミズーリ州ニューマドリッドを震源とするマグニチュード7.4から8.0の地震が発生。

これらの地震により、地盤の隆起や陥没、地割れ、地滑り、川岸の崩壊などが広範囲で発生しました。特に2月7日の地震では、ミシシッピ川に一時的な滝ができ、その影響でリールフット湖が形成されました。

当時の証言

地震発生当時、多くの人々がその体験を記録しています。

ジョン・ブラッドベリー：ロンドン・リンネ協会のフェローで、ミシシッピ川上で地震を経験し、その詳細を記録しました。
エリザ・ブライアン：ミズーリ準州ニューマドリッドの住人で、地震の体験を詳細に記録しました。
ジョン・レイノルズ：イリノイ州知事を務めた人物で、自伝の中で地震について言及しました。
サミュエル・スワン・マクレランド：シェーカー教徒の日記作者で、インディアナ州の開拓地で地震の影響について記述しました。

これらの証言は、当時の人々の生活が地震によってどのように影響を受けたかを伝えています。

地震の影響

地震の影響は広範囲に及びました。

地盤の変化: 震源地付近では、砂の噴出が多数発生しました。
広範囲な揺れ: 地震波は硬い地盤を伝わり、遠く離れた地域でも揺れが感じられました。ペンシルベニア州ピッツバーグやバージニア州ノーフォークでは、多くの人が揺れで目が覚め、マサチューセッツ州ボストンやカナダのオンタリオ州ヨーク（現在のトロント）でも教会の鐘が鳴ったと報告されています。ワシントンD.C.では、歩道が割れるなどの被害が出ました。
災害救助: 当時ルイジアナ準州知事であったウィリアム・クラークは、連邦政府に救済を要請しました。これは、アメリカ合衆国政府が領土内で受け取った最初の要請である可能性があります。
奴隷ジョージの殺人事件: 地震が、殺人事件の発覚につながったという出来事も記録されています。ジョージという奴隷が殺害された事件で、地震による煙突の崩落が遺体発見のきっかけとなりました。

地質構造

ニューマドリッド地震の原因は、地下深くに存在するリールフット亀裂という古代の断層に関連していると考えられています。

リールフット亀裂: この亀裂は、約7億5千万年前の超大陸ロディニア大陸の分裂時に形成されたもので、その後、地層に埋もれていました。しかし、この古代の亀裂が、現在の地震活動に影響を与えていると考えられています。
断層の動き: 現代の地震観測データによると、地震帯は複数の断層で構成されており、特にリールフット亀裂に沿った断層が地震活動の中心であることが示されています。この断層は、右横ずれ断層と突上げ断層の複合的な動きをしており、1811年から1812年の地震では、ミシシッピ川に滝を生じさせました。

近年の地震と再発の可能性

現在でもニューマドリッド地震帯は活動しており、小さな地震が頻繁に観測されています。

地震の再発可能性: 今後50年以内に、マグニチュード7.5から8.0の大地震が発生する確率は7〜10%、マグニチュード6以上の地震が発生する確率は25〜40%と予測されています。この地震帯での大地震は、広範囲に甚大な被害をもたらす可能性があるため、今後の研究が重要です。
* 経済的影響: 米国連邦緊急事態管理庁の報告によると、ニューマドリッド地震帯で大きな地震が発生した場合、アメリカ国内における最大の経済損失につながる可能性があるとされています。

まとめ

ニューマドリッド地震は、その規模の大きさから、歴史に名を残す大地震です。この地震は、広範囲にわたって揺れを引き起こし、地形を変化させ、人々の生活に大きな影響を与えました。現在も活動を続けるこの地震帯では、再発の可能性も指摘されており、今後の地震対策が重要です。

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