ニューヨーク、アイラブユー

『ニューヨーク、アイラブユー』（2009年）は、フランスとアメリカが共同制作した映画作品です。前作『パリ、ジュテーム』と同様に「愛」をテーマにしていますが、舞台はニューヨークへと移り変わります。

本作の最大の特徴は、複数の監督がそれぞれ短編映画を制作し、それらを繋ぎ合わせて一つの長編映画として完成させている点にあります。単なるオムニバス作品ではなく、各短編は巧みに編集され、登場人物たちの物語が互いに絡み合い、ニューヨークという街の多様な側面と、そこで生きる人々の様々な愛の形を描き出しています。これは映画制作において、類を見ない斬新な手法と言えるでしょう。

製作過程では、スカーレット・ヨハンソンも監督として参加していましたが、完成版には彼女の作品は含まれていません。2008年にはトロント国際[[映画祭]]で未完成版が上映されました。日本での公開は当初2009年秋を予定していましたが、配給会社ザナドゥーの経営破綻により延期され、2010年2月27日に公開されました。日本版DVDには、劇場公開版には収録されなかったスカーレット・ヨハンソン監督作品が特典映像として収録されているため、コレクターズアイテムとしても価値があります。レンタル版には収録されていない点に注意が必要です。

ストーリーは、ニューヨークの街で出会う様々な人々の物語が交錯する群像劇となっています。スリから財布を盗まれた中年紳士と、その財布の中にあった写真に写っていた女性との出会い、厳格な宗教観を持つ男女の出会い、映画音楽作曲家と監督アシスタントとの奇妙な関係、路上での出会いから始まる男女の恋愛、失恋した若者と薬剤師の娘、一夜限りの関係を再び求める男女、元オペラ歌手とホテルマンの交流、公園で遊ぶ子供たちを見守る黒人青年、中国茶店の女性をモデルに絵を描く画家、レストランでの出会いをきっかけに始まる男女の会話、そして喧嘩が絶えない老夫婦など、多様な人間関係と愛の形が、ニューヨークという舞台を背景に描かれています。これらの物語は、ビデオアーティストの視点を通して、まるで街全体が一つの巨大な物語であるかのように構成されています。

監督陣には、チアン・ウェン、ミーラー・ナーイル、岩井俊二、イヴァン・アタル、ブレット・ラトナー、アレン・ヒューズ、シェカール・カプール、ファティ・アキン、そしてランディ・バルスマイヤー、ジョシュア・マーストンといった、国際的に活躍する監督たちが名を連ねています。それぞれの監督の個性が色濃く反映された短編映画が、全体として有機的に繋がっており、見る者に多様な視点と解釈を与えてくれます。また、ヘイデン・クリステンセン、レイチェル・ビルソン、アンディ・ガルシア、イルファーン・カーン、ナタリー・ポートマン、オーランド・ブルーム、クリスティーナ・リッチ、マギー・Q、イーサン・ホーク、アントン・イェルチン、オリヴィア・サールビー、ジェームズ・カーン、ブレイク・ライヴリー、ブラッドレイ・クーパー、ジュリー・クリスティ、シャイア・ラブーフ、ジョン・ハート、カルロス・アコスタ、ジャシンダ・バレット、テイラー・ギア、ウグル・ユーセル、スー・チー、バート・ヤング、ロビン・ライト・ペン、クリス・クーパー、エミリー・オハナ、ジャスティン・バーサ、エヴァ・アムリ、イーライ・ウォラック、クロリス・リーチマンなど、豪華な俳優陣の演技にも注目です。

批評家の評価は、Rotten Tomatoesでは支持率37%、Metacriticでは49/100と、賛否両論あるようです。しかし、実験的な手法と豪華なキャスト、そしてニューヨークの街並みを背景にした美しい映像は、多くの観客を魅了する要素となっています。この映画は、単なる恋愛映画という枠を超え、ニューヨークという街の多様な側面と、そこに生きる人々の複雑な感情を深く掘り下げた、挑戦的な作品と言えるでしょう。

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