ニュー・ストレーツ・タイムズ

ニュー・ストレーツ・タイムズ：マレーシアを代表する英字新聞の軌跡

ニュー・ストレーツ・タイムズは、マレーシアで最も歴史のある英字新聞として知られています。1845年、ザ・ストレーツ・タイムズとして創刊された同紙は、当初イギリス領マラヤとシンガポール全域を対象としていました。シンガポールがマレーシア連邦から分離独立した1965年以降は、マレーシア版とシンガポール版に分かれ、それぞれ独立して発行されるようになりました。

1974年にはニュー・ストレーツ・タイムズとして再出発。その後、2004年にはタブロイド版を創刊、2005年には長年親しまれてきたブランケット判からタブロイド判への完全移行を断行するなど、時代の変化に合わせて柔軟な対応を続けてきました。現在もマレーシアで広く読まれている新聞であり、価格は1.20リンギットです。

発行と組織

ニュー・ストレーツ・タイムズはニュー・ストレーツ・タイムズ・プレス社から発行されており、同社はメディア・プリマ社のグループ企業です。過去には英字夕刊紙のマレー・メールや、マレー語紙のブリタ・ハリアンも発行していました。

2009年時点の主要スタッフには、Syed Nadzri Syed Harun（グループ・エディター）、Kamrul Idris Zulkifli（副グループ・エディター）、Lee Ah Chai（ニュース部門エグゼクティブ・エディター）、Chandra SegaranとLim Thow Boon（プロダクション部門エグゼクティブ・エディター）らが名を連ねています。

技術革新への取り組み

ニュー・ストレーツ・タイムズは常に技術革新にも積極的で、2011年には紙面デザインとロゴを一新しました。さらに同年には、印刷版とオンライン版の双方に3D印刷を導入。2012年には、音声付き広告を掲載する「しゃべる新聞」という画期的な試みを行い、ダッチ・レディー社のFrisoブランド商品、Axiata、ワンダ・コーヒーなどの広告でその技術を披露しました。

政治と報道

マレーシアの政治情勢を反映するように、ニュー・ストレーツ・タイムズは政治的にセンシティブな問題にも積極的に関わってきました。1969年のマレーシア総選挙前には、シンガポールでの販売が禁止されるという事態も発生。シンガポールのザ・ストレーツ・タイムズもマレーシアでの販売が禁止されるなど、両国間のメディア関係は複雑な様相を呈してきました。

2012年には、オーストラリア連邦議会上院議員ニック・ゼノフォン氏に関する記事掲載をめぐり、大きな論争に巻き込まれました。同紙はゼノフォンのスピーチをイスラム批判と報じましたが、実際はサイエントロジー批判であり、この報道は大きな誤報として批判を浴び、ゼノフォン氏からの訴訟を招きました。この事件は、マレーシアのメディアが与党連合である国民戦線のプロパガンダに偏向しているとの批判を改めて浮き彫りにしました。

文化への貢献

ニュー・ストレーツ・タイムズは、マレーシアの文化にも貢献してきました。著名なマレーシア人漫画家ラットによる時事問題を題材にした漫画『Scenes of Malaysian Life』を長年にわたり連載していることは、その一例です。

まとめ

ニュー・ストレーツ・タイムズは、マレーシアの歴史と社会を長年にわたり記録し、発信してきた老舗新聞です。技術革新への取り組みや、政治的論争への関与を通して、マレーシア社会に大きな影響を与え続けています。その歴史と報道姿勢は、現代マレーシアのメディア環境を考える上で重要な要素となっています。今後もマレーシアの主要メディアとして、その役割を果たしていくことが期待されます。

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