ニルギリ山岳鉄道

ニルギリ山岳鉄道：インドの歴史と自然を繋ぐ鉄道遺産

ニルギリ山岳鉄道は、インドのタミル・ナードゥ州、ニルギリ県に位置する歴史的な鉄道です。19世紀に建設されたこの鉄道は、インド最古の山岳鉄道の一つとして知られ、その独特な構造と美しい景観から、2005年にはダージリン・ヒマラヤ鉄道と共にユネスコ世界遺産「インドの山岳鉄道群」として登録されました。

鉄道の歴史と建設

ニルギリ山岳鉄道の計画は1845年に始まりましたが、実際に建設が始まったのはその後、イギリスの主導によるものでした。そして1899年6月、マドラス鉄道会社の経営のもと、一般向けの鉄道として開通しました。この鉄道は、麓のメットゥパラヤム（標高326m）から、避暑地として知られるウダカマンダラム（標高2203m）までの約46kmを結び、高低差のある地形を克服しながら、乗客を運び続けています。

ラック式鉄道の仕組み

ニルギリ山岳鉄道の大きな特徴は、メットゥパラヤム - クーヌール間で使用されているラック式鉄道のシステムです。この区間は急勾配が続くため、SLM社製のラック式蒸気機関車が、客車を押し上げたり、あるいは牽引したりすることで運行しています。この区間の最大傾斜は12対1（83‰）、平均傾斜は24.5対1（41‰）という急勾配であり、蒸気機関車は登りでは最後尾に連結して列車を押し上げ、下りでは先頭に連結して速度を制御します。現在、インドで稼働している蒸気機関車鉄道は数少なくなっています。

運行ルートと駅

鉄道の総走行距離は45.88kmで、その間には208ものカーブ、16のトンネル、そして250の橋梁が存在します。メットゥパラヤムとウダカマンダラムの間には、クーヌール、ヒルグローヴ、ウェリントン、アラヴァンガドゥ、ケッティ、ラヴデイルといった駅があり、それぞれの駅が地域の特色を反映しています。

運営状況

ニルギリ山岳鉄道は、現在パラガット県管区によって管理されています。年間およそ100万ドルの赤字を計上しており、運営面では課題も抱えています。しかし、その歴史的価値と観光資源としての魅力は依然として高く、多くの人々がこの鉄道に乗ってニルギリの美しい山岳風景を楽しんでいます。

ニルギリ山岳鉄道は、単なる移動手段としてだけでなく、インドの鉄道技術の歴史、そしてニルギリ地方の自然と文化を体験できる貴重な遺産です。その保存と活用が、今後も重要な課題となるでしょう。

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