ニルス・ゲーゼ

ニルス・ヴィルヘルム・ゲーゼ（1817年2月22日 - 1890年12月21日）は、デンマークを代表する作曲家、指揮者、そして音楽教師であり、北欧音楽界の近代化に大きく貢献しました。彼の音楽は、ロマン派音楽の潮流に乗りながらも、北欧の民族的な要素を取り入れた独自のスタイルを確立し、後世の音楽家たちに多大な影響を与えました。作曲家アクセル・ゲーゼは彼の息子です。

生涯

ゲーゼはコペンハーゲンの楽器職人の家庭に生まれ育ちました。幼い頃から音楽に親しみ、17歳で王室オーケストラのヴァイオリン奏者として活動を始めます。1842年に自作の《交響曲第1番》を作曲しますが、当初はコペンハーゲンでの演奏が拒否されます。しかし、この作品をフェリックス・メンデルスゾーンに送ったことが彼の運命を大きく変えます。メンデルスゾーンはその才能を高く評価し、1843年に自らの指揮でライプツィヒで初演しました。この成功をきっかけに、ゲーゼはライプツィヒに移住し、ライプツィヒ音楽院で教鞭をとる傍ら、ゲヴァントハウス管弦楽団の副指揮者を務めました。

ライプツィヒ時代には、メンデルスゾーンから多大な影響を受け、創作活動における重要な指針を得ました。また、ロベルト・シューマンとも親交を深め、音楽家としての視野を広げました。1847年にメンデルスゾーンが亡くなると、ゲーゼはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席指揮者の地位を引き継ぎますが、翌1848年にデンマークとプロイセンの間で第一次シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン戦争が勃発したため、デンマークに帰国します。

帰国後は、コペンハーゲン音楽協会の終身総裁に就任し、オーケストラや合唱団を新たに設立するなど、デンマークの音楽界の発展に尽力しました。また、オルガン奏者としても活動し、ヨハン・ペーター・エミリウス・ハートマンからコペンハーゲン音楽院院長職を引き継ぎました。1852年にはハートマンの娘と結婚しています。晩年は北欧音楽界の権威ある教育者として名を馳せ、エドヴァルド・グリーグやカール・ニールセンなど、次世代の音楽家を育成しました。1890年、コペンハーゲンで生涯を閉じました。

ゲーゼは、ソナタ形式を重視した交響曲や室内楽などの器楽ジャンルにおいて、特に重要な足跡を残しました。彼の功績は、北欧音楽史における重要な位置を占めています。

主要作品

ゲーゼの作品は多岐にわたり、8つの交響曲、ヴァイオリン協奏曲、室内楽、ピアノ曲、カンタータなどが知られています。代表作としては、カンタータ《コモラ》（1846年）や《妖精の娘》（1853年）、演奏会用序曲《オシアンの余韻》作品1などがあります。彼の作品は、メンデルスゾーンやシューマンの影響を受けつつも、デンマーク民謡の要素を取り入れた独自の作風が特徴です。

グリーグのピアノ作品集『抒情小曲集』の中には、「ゲーゼ」というタイトルの小品があります。これは1893年に発表された第6巻（作品57）の第2曲で、作曲の3年前に亡くなったゲーゼへの追悼の意を込めて作曲されました。

歌劇
マリオッタ
バレエ
ナポリ（第2幕のみ）
交響曲
交響曲第1番ハ短調 Op. 5
交響曲第2番ホ長調 Op. 10
交響曲第3番イ短調 Op. 15
交響曲第4番変ロ長調 Op. 20
交響曲第5番ニ短調 Op. 25(ピアノ独奏も付いてるためピアノ協奏曲の性格が強い。)
交響曲第6番ト短調 Op. 32
交響曲第7番ヘ長調 Op. 45
交響曲第8番ロ短調 Op. 47
管弦楽曲
オシアンの余韻 Op. 1（1840年、この曲でコペンハーゲン音楽協会の作曲コンクールの1位を獲得した）
スコットランド序曲「高地にて」Op. 7
ノヴェレッテ
田舎の夏の日
ハムレット
ホルベルギアーナ
協奏曲
ヴァイオリン協奏曲ニ短調
ヴァイオリンと管弦楽のためのカプリッチョ
室内楽曲
弦楽四重奏曲ニ長調 Op. 63
弦楽四重奏曲ホ短調
弦楽四重奏曲ヘ短調
弦楽四重奏曲ヘ長調「出会いと別れ」
弦楽五重奏曲ホ短調 Op. 8
弦楽八重奏曲ヘ長調 Op. 17

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