ニヴルヘイム

ニヴルヘイム：北欧神話の氷と霧の死の国

ニヴルヘイム（Niflheimr）は、北欧神話において九つの世界の一つとして位置づけられる、極寒の死者の国です。古ノルド語で「霧の国」あるいは「暗い国」を意味し、その名の通り、氷と霧に閉ざされた世界観が特徴です。

混沌の淵と世界樹の根

ニヴルヘイムは、天地創造以前から存在していたとされています。灼熱の火の国ムスペルヘイムとは、ギンヌンガガプという巨大な亀裂によって隔てられています。そして、この極寒の世界には、世界樹ユグドラシルの根が伸びており、その根元にはフヴェルゲルミルという泉が湧き出しています。この泉は、世界樹の根を絶え間なく齧り続ける毒蛇ニドヘグの住処であり、同時に、様々な川々の源流でもあります。

多くの川とヘルヘイムとの繋がり

フヴェルゲルミルから流れ出る川々は、フヴェルゲスヴォル、グンスラー、フィヨルム、フィンブルスル、スリーズ、フリーズ、シュルグ、ユルグ、ヴィーズ、レイプト、ギョッルなど、数多く存在します。特にギョッル川は、ニヴルヘイムと、ロキの娘ヘルが支配する死者の国ヘルヘイムを隔てる川として重要な役割を果たしています。この二つの世界を繋ぐように、ギャラルブルという黄金の橋が架けられており、女巨人モーズグズがその橋を守る存在として神話に描かれています。

エーリヴァーガル：凍てつく北への流れ

ニヴルヘイムには、エーリヴァーガルというもう一つの重要な川が存在します。この川は、凍りついたまま北へと流れ、ギンヌンガガプへと至るとされています。ギンヌンガガプは混沌の淵であり、世界の始まりと深く関わっているとされる場所です。エーリヴァーガルは、ニヴルヘイムの閉ざされた世界と、混沌の淵を繋ぐ象徴的な存在と言えるでしょう。

ヘルヘイムとの関連性と死者の国としての側面

ニヴルヘイムは、しばしばヘルヘイムと同一視されることがあります。これは、ニヴルヘイムが死者の国としての側面を強く持っているためです。実際に、ロキの娘ヘルは、神々の反逆者としてニヴルヘイムに投げ込まれたとされています。ニヴルヘイムは、単なる氷と霧に閉ざされた国というだけでなく、死後の世界、そして神々の世界とは異なる、独特の秩序を持つ異界として描かれていると言えるでしょう。

まとめ：神秘と混沌の融合

ニヴルヘイムは、極寒の死者の国として、世界樹の根や多くの川々、そして混沌の淵と深く関わる、神秘的な場所です。その氷と霧に覆われた世界は、北欧神話における死と再生、混沌と秩序といった相反する概念を象徴的に表現していると言えるでしょう。ヘルヘイムとの関連性も深く、北欧神話の世界観を理解する上で、重要な位置を占める世界の一つです。

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