ヌー

ヌー (Gnu)

ヌーは、哺乳綱ウシ目ウシ科ヌー属に分類される動物の総称で、アフリカ大陸南部に生息しています。ウシとカモシカの特徴を併せ持ったような体型から、ウシカモシカという和名でも知られています。ここでは、ヌーの生態、分類、そして特徴的な大移動について詳しく解説します。

生態

成獣の体重は200kgから250kgに達し、大きな群れを形成して生活します。その群れには、シマウマが混じることもあります。草食性で、草原を求めて集団で大移動することで有名です。特徴的なのは、横に張り出しながら湾曲して天を突くような角で、これはハーテビースト亜科に共通する特徴です。また、角の付け根のコブ状の部分や、肩の盛り上がった背中も印象的です。

嗅覚が非常に鋭いことでも知られ、遠く離れた場所の雨の匂いも嗅ぎ分けることができると言われています。天敵としては、ライオン、ヒョウ、チーター、ブチハイエナ、リカオン、ナイル[[ワニ]]などが挙げられ、幼獣はジャッカルにも狙われます。

分類

ヌー属には、以下の2種類が知られています。

オグロヌー (Connochaetes taurinus)
ケニア以南のアフリカ中南部（ケニア、タンザニア、南アフリカなど）のサバンナや半砂漠地帯に生息しています。特に、タンザニアのンゴロンゴロ自然保護区やセレンゲティ国立公園の個体群が有名です。成体の体長は180-240cm、肩高は125-145cm、体重は150-270kgにもなります。地域によって様々な亜種が存在することが知られています。
オジロヌー (Connochaetes gnou)
南アフリカ中央部のサバンナに生息しています。かつては南アフリカの硬貨のデザインにも用いられていました。野生種は1936年に絶滅しましたが、現在は農場などで飼育されていた個体が、南アフリカのシャンワリ動物保護区などに放たれて再繁殖が試みられています。

ヌーの大移動

ヌーは、2月から3月にかけての小雨期に、雄と雌のグループに分かれて生活します。雌のグループは集団で出産を行い、4月にかけてこれらのグループが合流すると、数万から数十万頭という大規模な群れになります。そして、食料を求めて半年近くにも及ぶ大移動を開始します。

特に有名なのは、ケニアのマサイマラ国立保護区からタンザニアのセレンゲティ国立公園への移動です。この移動では、ケニアとタンザニアの国境付近を流れるマラ川を渡る必要があります。この川渡りでは、ワニに捕食されたり、溺死する危険性が非常に高いにもかかわらず、ヌーは集団で川を渡ります。この行動は、太古からの移動ルートが牧場などで寸断され、ルート変更を余儀なくされた結果であるという指摘もあります。

牧場では、有刺鉄線（バッファローフェンス）が張り巡らされており、ヌーなどの野生動物の侵入を防いでいますが、これに突入して死亡するヌーも少なくありません。また、マラ川での大量溺死は、川の生態系にとって貴重な栄養源になっていることが研究により判明しています。

川の生態系への貢献

ヌーの大量溺死は、マラ川の生態系に大きな影響を与えています。死んだヌーの体は、川の栄養源となり、特に骨は分解に約7年かかり、ゆっくりと時間をかけてリンを排出します。リンは、植物や動物の成長に不可欠な栄養素です。また、骨の表面を覆うバイオフィルムと呼ばれる微生物の膜が、川の魚の餌となります。

アメリカのケアリー生態系研究所の研究によれば、ヌーの栄養分の約半分が川の生態系に取り込まれていることが分かっています。残りの半分の行方はまだ解明されていませんが、ヌーの大量溺死が、川の生態系を支える上で重要な役割を果たしていることは間違いありません。

まとめ

ヌーは、アフリカのサバンナを代表する動物であり、その生態、分類、大移動は、自然の驚異と生命のつながりを教えてくれます。特に、大規模な移動とそれに伴うマラ川での溺死は、一見すると悲劇的な出来事ですが、生態系全体の視点で見ると、重要な役割を果たしていることがわかります。

関連項目

* GNU

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